「めぐしき女陰陽師」(弍) ページ23
「何故付いて来るのですか」
「帰路が同じなのだから当然だ」
「……」
荒に背を向けているのを良いことに、Aは鬱陶しそうに顔をしかめる。
「さっさと歩け。余計帰りが遅くなる」
そう言うなら、わざわざ人間如きに歩幅を合わせてやらずに置いて帰ってしまえば良いのに。
Aは心の中で不満を垂れた。
腹立たしさを顔に出したまま、何も言葉を返さずにまた歩き始める。
……恐らく迎えに来てくれたのであろう相手に、こうやって無礼な態度を取り続ければ、普通は愛想を尽かして先を行くものだと思うのだが。
どうやら荒は、Aを一人にするつもりなど毛頭無いらしい。
ただ、一人で帰りたいという気持ちは組んでくれているのか、隣には立たずにやや後ろに下がった所で歩いていた。
それきり二人は、無言だった。
どちらからも話し掛けることはなく、月光と行灯のみが照らす道をただひたすら無言で歩く。
Aは考え事をしていた。
精霊馬というお盆の象徴的お供え物がある。
ナスとキュウリを使って、足の早い馬と足の遅い牛に見立てて作るのだ。
亡くなったご先祖があの世とこの世を行き来する為の乗り物で、「行きは馬で早く、帰りは牛でゆっくり」という遺族の思いが込められているそう。
これをAの場合に当てはめると「行きは山蛙で早く、帰りは歩きでゆっくり」となる。
……あ、少し似ているな。
なんてくだらないことを考えているのは、少しでもこの気まずさから逃れる為であった。
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イズモ(プロフ) - 蒼羅さん» コメントありがとうございます!更新頑張ります(о´∀`о)荒様はかっこいい!!笑 (2018年6月20日 8時) (レス) id: 2950d60cf9 (このIDを非表示/違反報告)
蒼羅 - 荒様格好いい!!この小説読んで荒様のイメージが変わった(´V`)♪続き楽しみにしてます!!更新頑張って下さい!! (2018年6月19日 22時) (レス) id: 6ae6ae8c8c (このIDを非表示/違反報告)
イズモ(プロフ) - 美八さん» ありがとうございます!!もう少しだけお待ちください! (2018年6月14日 12時) (レス) id: 2950d60cf9 (このIDを非表示/違反報告)
美八 - 私は、この続きが気になっているのでお待ちしております! (2018年6月14日 7時) (レス) id: 008655f029 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イズモ | 作成日時:2018年5月13日 21時