「憂いな盆休み」(弍) ページ16
『A様は毎年、村に帰るのをとっても楽しみにしておられます。両親に会えるし……あのお方のお墓にも寄ることが出来るし』
紙人形の声音に、しんみりとした感情がこもった。
『A様はああ見えて、いつも息苦しい思いをされているのです』
「……」
『だから今日だけなんて言わずに、お盆の期間中だけでも故郷でお過ごしになれば良いのにって、僕は思うんですよ』
「……」
『でも難しい話なんですよね。A様は、多くの人に必要とされている陰陽師ですから……』
そこまで言って紙人形は、口に当たるらしき部分を抑えた。
『ああ僕はお喋りだから余分なことまで喋っちゃう。喋り過ぎたこと、A様には内緒にしてくださいね』
紙人形は棚の上までふわっと飛んで行き、埃を落とし始めた。
「……」
荒はAの部屋から離れた。
どこか物憂いげな顔つきで。
……時と場所は変わって。
村に入る少し手前で、Aは山蛙の背から降りた。
「山兎、山蛙。ありがとうございました。貴女達に頼むと早いですね」
山兎と山蛙はにんまりと笑顔を見せる。
「お安い御用だよ! またいつでも呼んでねー!」
山兎を乗せた山蛙がピョンピョン地面を蹴りながら茂みに飛び込んで行くのを見送ってから、Aは歩き出した。
大分育ってきた水田の稲が、生暖かい風に吹かれてそよそよ揺れている。
その様はまるで草原のよう。
途中すれ違う子供や大人に挨拶を返しながら、緩やかな坂道を道なりに進む。
もうすぐ坂を上り切りそうなところで、Aを待つ女性の人影が見えた。
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イズモ(プロフ) - 蒼羅さん» コメントありがとうございます!更新頑張ります(о´∀`о)荒様はかっこいい!!笑 (2018年6月20日 8時) (レス) id: 2950d60cf9 (このIDを非表示/違反報告)
蒼羅 - 荒様格好いい!!この小説読んで荒様のイメージが変わった(´V`)♪続き楽しみにしてます!!更新頑張って下さい!! (2018年6月19日 22時) (レス) id: 6ae6ae8c8c (このIDを非表示/違反報告)
イズモ(プロフ) - 美八さん» ありがとうございます!!もう少しだけお待ちください! (2018年6月14日 12時) (レス) id: 2950d60cf9 (このIDを非表示/違反報告)
美八 - 私は、この続きが気になっているのでお待ちしております! (2018年6月14日 7時) (レス) id: 008655f029 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イズモ | 作成日時:2018年5月13日 21時