「神の心人知らず」(陸) ページ12
晴明が落ち着きを払いながらAに問い掛ける。
「Aはどうしたい?」
「どうしたい……と言いますと?」
「恋仲になりたいとは、思わないのか?」
Aは瞬時に首を横に振った。
「そんな……あのお方は神様ですよ。おこがましいにも程があります」
「その口ぶり。付き合うこと自体には抵抗がないと言っているように聞こえるが?」
「……そう解釈しますかね?」
大内裏陰陽寮に勤める者の中では割と仲良くさせて貰っている、というのは自覚があるし、嬉しいことだと思っている。
だが人間と神様の線引きはちゃんと守るべきだという考えを変えるつもりなど、Aには更々ない。
そういうつもりで言ったのに……何故なのか熱がAの頬に集中してきた。
ニヤけた連中がAの逃げ道を確実に失わせる。
皆、普段は飄々としているAの意外な一面が見られて、とても満足しているのだ。
「もしかして今、私の顔、赤かったりします?」
「ええ、とても」
八百比丘尼が手鏡を取り出したが、そんなもの覗きたくないAはすっくと立ち上がる。
居た堪れない気分だった。
お邪魔しましたと早口早足で廊下へ向かう。
「お? 悩み事解消したか?」
「……」
博雅のからかうような声が憎らしく響いた。
解消どころか増幅したというのに。
「告白返しに行くのね?」
「しませんよ」
何故か嬉しそうな神楽の声がAに突き刺さる。
「話の切り出し方が重要だぞ」
「ですから、しませんって」
晴明は優しげに微笑しながら助言するが、捉えようによっては面白いものを見た悪人の面にも見えた。
「小白は応援していますからねー!」
最後は小白にとどめを刺され、Aは頭を抱える思いでさっさと逃げ帰る。
ひやかしを一身に受けたせいか、体温上昇が尋常でない勢いだ。
どうか気のせいであってくれと願って晴明達の元へ行ったのに、結局余計に確信がついてしまう結果となった。
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イズモ(プロフ) - 蒼羅さん» コメントありがとうございます!更新頑張ります(о´∀`о)荒様はかっこいい!!笑 (2018年6月20日 8時) (レス) id: 2950d60cf9 (このIDを非表示/違反報告)
蒼羅 - 荒様格好いい!!この小説読んで荒様のイメージが変わった(´V`)♪続き楽しみにしてます!!更新頑張って下さい!! (2018年6月19日 22時) (レス) id: 6ae6ae8c8c (このIDを非表示/違反報告)
イズモ(プロフ) - 美八さん» ありがとうございます!!もう少しだけお待ちください! (2018年6月14日 12時) (レス) id: 2950d60cf9 (このIDを非表示/違反報告)
美八 - 私は、この続きが気になっているのでお待ちしております! (2018年6月14日 7時) (レス) id: 008655f029 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イズモ | 作成日時:2018年5月13日 21時