想いの終着点II (ページ16)

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開幕の狼煙ページ16

色とりどりの国旗、会場全体から聞こえる歓声。

当然校舎の入り口には、不破君を主導として作られた看板が飾られた。

それに対する称賛の声もあちこちから聞こえる。

そして碧落の下、体育祭が開幕した。

準備体操や全員参加の徒競走が始まり、紅白の鉢巻が棚引く。

『(徒競走は…二位)』

『(私にしては良い方、か)』

不破「Aちゃんナイス〜！！！」

『わ』

『あ、ありがとう…ございます』

女子の徒競走が終わって退場するなり、不破君が話しかけてきた。

手を差し出し、どうやらハイタッチを求めているようで。

そろっと手を前に出し、遠慮がちに触れる。

不破「ん！！お疲れ〜！！！」

『次は男子の徒競走、ですよね？』

不破「そだよ〜！」

『…えっと、頑張って下さい』

不破「にゃはは、Aちゃんに応援されたら俺一位取っちゃうかもしれんよ？」

優しく笑った彼に言葉を発する前に、彼は入場の列へと並びに行ってしまった。

他の生徒と変わらない格好だというのに、彼は他より目立って見える。

それは彼の人気のせいか、はたまた特徴的な髪の毛のせいか。

数人が走り終えて、彼の出番がやってくる。

真剣に前を向いてピストルの音を待っている。

『(＿＿＿＿＿あ)』

始まった、そう思った瞬間に彼が走る姿に目を奪われた。

音が遠く聞こえた。

他の何もかもがぼやけて見えて、ただ一人。

彼だけが、はっきりと目に移る。

色鮮で、煌めいて、姿が刻まれる。

普段お世辞にもキリッとしているとは言えない。

どちらかというとふにゃふにゃしているイメージだった。

なのに、今の彼はイメージとは似ても似つかない。

「…あれ？Aさん大丈夫？」

「さっき走ってたからじゃない？顔ちょっと赤いよ？」

『え…あ、そうかも、しれないです』

覚束ない手で水筒を手に取り、水を飲む。

冷たく滑り落ちる水が喉を潤すも、頬に僅かに宿った火照りは消えない。

本当に僅かなのに、存在を認められずにはいられない。

一体それが何なのか、私には分からなかった。

そんな私を、甲高い歓声が現実に引き戻す。

どうやら彼は一位でゴールしたらしく、女子の声援は止まない。

不破「…！」

彼は私を見つけて、パアッと笑顔の花を咲かせる。

そのまま彼は、太陽のように輝くピースを掲げた。