想いの終着点II (ページ12)

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横顔はページ12

＿＿＿＿体育祭の、本格的な練習が始まった。

クラス対抗、全員で行う「綱引き」や、リレー選手の練習。

応援団も団長を中心に練習している声が、早朝から校内に活気を与えた。

不破「あ、Aちゃん！」

『…どうも』

不破「ね、ちょっと気になったんやけど…」

不破「なんでそんなに三角コーン持ってるの？」

彼が私に話しかけてきたのは、昼休みのグラウンドでのこと。

私は両手で三角コーンをいくつも重ねて持っていた。

『部長に頼まれて、運んでたんです』

『手が空かないから、代わりに備品の移動をしてくれないか…って』

不破「んぁ？備品の移動ってことは、コレ以外にも？」

『…まぁ』

不破「…………」

不破「…じゃー俺手伝う！」

『えっ』

不破「どう考えても女子一人が運ぶ量じゃないでしょ」

『お構いなく。…大丈夫です』

不破「何回も往復してたら熱中症心配だし」

『水は飲んでます』

不破「…手伝いたいから、ね、いいでしょ」

犬か。

と、思わずガラにもないツッコミが心の中で出てしまう。

しかし目の前の彼はどうにもこうにも、引く気が無いらしい。

三角コーンなんて運んでも面白くないというのに。

言っておくが私は面白くないと思っている。

目の覚める様な赤をずっと見ていると、目がチカチカしてくるのだ。

『…何もお返し出来ませんよ』

『見返りはないです。…デメリットしか無いと思いますが』

不破「メリットとか求めてやってないから大丈夫、んじゃ」

ひょい、と三角コーンが抱えあげられる。

先程まで私の手にあったものだ。

不破「これ何処へ持ってくか教えて？」

『…校舎裏の倉庫です』

不破「おけ！」

…私からは逆光で、あまり顔はよく見えなかった。

でも澄み渡る青空と太陽を背にしていた彼は、表情が見えなくとも笑っているように見えた。

写真写りは悪い筈のその逆光の横顔が、不思議と頭に浮かぶ。

思考をそこから逸し、備品の移動を進めようと私は踵を返した。