衝動、物音と共に。 ページ3
応接室のソファの背に体を預け、虎視眈々とこちらを見つめる彼は、かの有名な”雲雀 恭弥”だ。
彼は風紀委員長でありながら不良の頂点に君臨する……言うならば、異端児。
いや、イレギュラー、という方が正しいかもしれない。
「なんだあいつ?」
「獄寺、待て……」
若干イラつき始めた獄寺さんを武が宥める。
しかし、その様子も気にせず”ヒバリ”はこちらを見据えて淡々と言った。
「風紀委員長の前ではタバコ消してくれる?」
その言葉を聞き、夏の暑さでは流れないような冷や汗が背を伝うのが分かる。
「ま、どちらにせよ、ただでは帰さないけど」
虎に見つめられた兎のように何も出来ずに立ち尽くしていると、何も知らない獄寺さんは彼につっかかった。
「んだとてめ――」
そこまで言ったところで、彼の言葉の勢いは止まる。
何故なら……
「消せ」
”ヒバリ”の武器によって、タバコの火が強制的に消されてしまったから。
「なんだこいつ!!」
あまりの異常さに獄寺さんは血相を変えて飛び退いた。
その後静止した彼の手に握られていた武器は、トンファー。
それを確認して、より恐怖が増す。あくまで噂だと思っていたが、まさか本当だったとは。
−−”ヒバリ”は気に入らない人物を、仕込みトンファーでめった打ちにする、なんて。
本能をピリピリと刺激する程の視線をこちらに向けつつ、彼は続ける。
「僕は弱くて群れる草食動物が嫌いだ。視界に入ると――」
「咬み殺したくなる」
いつ喧嘩することになってもおかしくない、この緊迫感。
これはどうしようもできないと覚悟を決めて、刀を持ち運び用の袋から取り出す。
すると、そこにするりと入り込んだすきま風のように一人の人物が応接室に足を踏み入れた。
「へー、はじめて入るよ。応接室なんて」
それは、状況を何も知らされていない沢田さんだった。
「まてツナ!!」
「沢田さん、前!!」
武と私が声をかけるも、時すでに遅し。
「1匹」
トンファーで容赦なく殴られ、ガッ、という鈍い音が響いた。
そのまま部屋の奥にすっ飛んでしまった沢田さんを見て、凪いでいた感情に波がたつ。
私達が、なんとかしなくちゃ。
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作者名:春夏秋冬 | 作成日時:2020年3月15日 16時