意図せぬ嘘。 ページ2
「もー秋か〜」
まだ暑さの残る中、青空の下、屋上で私達は昼食をとっていた。
「夏休みもあっという間に終わって何かさみしーなー」
「補習ばっかだったしな」
「二人とも大変そうだったね……」
「アホ牛がブドウブドウって最近ウザくねースか？」
各々が思い思いに雑談を繰り広げている。
再び戻ってきた日常に安堵しつつおにぎりを頬張ると、いつも波乱を呼んでくるあの赤子の声がした。
「栗もうまいぞ」
「いだ！いだだ！」
栗が飛んできた方向に条件反射で振り返ると、お約束通りリボーンさんがいる。
「ちゃおっス」
「いたいいたい刺さってるー!!」
まあ、栗も驚く様相でのご登場であったが。
「これは秋の隠密用カモフラージュスーツだ」
「100人が100人振り返るぞ！」
いやしかし、沢田さんのツッコミは今日も冴えているなあ。
むしろ最近磨きがかかっている気もする。
これも家庭教師であるリボーンさんのお陰なのかもしれない。
ツッコミスキルを伸ばすのは、絶対に家庭教師の仕事じゃないけど。
二人のやりとりを楽しく眺めていると、リボーンさんがファミリーのアジトを作ると言い出した。
アジトと聞くと、私は本当にマフィアの一員なのだと実感して、緊張してくる。
「どこに作るんだ？裏山か？」
「なわけねーだろ！」
それに相反して、温度差はあるにせよ獄寺さんと武は乗り気だ。
完全にアジトを作る雰囲気なので大人しく話を聞いていたが、リボーンさんは何の気なしにとんでもないことを言い出した。
「学校の応接室だ」
どうやら、学校内に作るらしい。それは、果たしてアジトと言えるのだろうか。
「応接室はほとんど使われてねーんだ。家具も見晴らしもいいし立地条件は最高だぞ」
それなら、まだマシな方かもしれない。心の中で何となく折り合いをつけ、楽しそうな彼らについていった。
道中、沢田さんが私に話しかけてきた。
「く、倉持さん。俺達、本当にアジトとか作るのかな……」
なるほど。彼も私と同様に不安だったのか。
彼の不安を少しでも払拭出来ればと思い、私は落ち着かせるように言った。
「大丈夫だよ、きっと。そんな危険なことにはならないだろうし。多分」
本当に落ち着くかどうかは別として。
案の定沢田さんは、はは、と強ばった笑みを見せてその後ずっと黙っていた。
応接室の前に着くと、武が、いの一番にドアを開ける。
すると。
「君、誰？」
……これは、沢田さんに嘘をついてしまったかもしれない。
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作者名：春夏秋冬 | 作成日時：2020年3月15日 16時
