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ちょうど昨日シーツを洗濯したばかりで、剥き出しだったベッドマットと掛け布団。
急いでチャックを閉じて整えると洗剤の匂いがして、「洗っといてよかった…」と呟きながら、若干散らかっていた机を何となく片付けて、重岡くんを呼ぶ。
ベッドを借りるのは…と遠慮されてしまうかもとは思ったが、よっぽどしんどいのか「ごめんなぁ…ありがとう」と素直に横になってくれて。
『クーラー付けるんで、ちゃんと布団被ってくださいね』
「ん…わかった」
『あとタオル、ぬるくなったり気持ち悪かったらすぐ呼んでください』
「かしこまりましたー」
ふふっと笑いながら俺を見つめてくる重岡くん。
多分、俺がやけにテキパキしてるのが面白いんだと思う。
『じゃあ、向こう行ってるんで…』
「あー、ちょっと待って」
『ん、何?』
力なく伸ばされた腕は、俺に触れることなくそのまま落ちていく。
「色々やって貰って悪いんやけど、あと一個だけわがまま聞いてくれへんか?」
『うん、もちろんやけど…』
コンビニは近いし、欲しいものがあるならすぐに買ってくる。なんでも言ってくれ、と身構えたのに、言われたのは「俺が眠るまでここにおって」と意外な言葉で。
『え…なに、一人で喋ってたらええですか?』
「なんやねんそれ(笑)…俺ちょっと今傷心中やねん、労わってや」
『…わかりました、居ますよ。ここに』
ずずっと椅子を引っ張ってきて、額に乗せたずり落ちそうになっていたタオルを元に戻していけば、またへへっと嬉しそうに笑って。
傷心中、とは。
やっぱり彼女と何かあったんだろうか。
でも、それは別に俺が聞く必要はないし…重岡くんが言いたいと思う時に言ってくれたら、それでいい。
…何より今日は、俺を呼んでくれて嬉しかった。
「今ひとりになったら、ちょっと俺キツイかも」
『良し、って言われるまで眠ってもここに居るんで。安心してください』
「眠ったら良しって言われへんやろ(笑)」
くすくすと笑いながら時折咳き込んで、体温計渡すの忘れてた…とリビングに戻ろうと思ったが、今はここにいることの方が大事な気がして。
「なんか…服も布団も、めっちゃ藤井の匂いすんねんなぁ」
『洗濯はしてますよ?』
「そうやなくて、ええ匂いやなって言ってんの」
また、前と同じ言葉。
どうもこの人は、俺の心臓を煩くさせるのが得意だ。
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ナ(プロフ) - ゆうみさん» ゆうみさん、初めまして。とても嬉しいコメントをありがとうございます!少しずつ更新していきますので、最後まで見守って頂けたら有難いです。 (2021年7月11日 23時) (レス) id: db537413ba (このIDを非表示/違反報告)
ゆうみ(プロフ) - はじめまして!すごく面白いです。2人の柔らかい空気が伝わってきて読んでてほっこりします。続きも楽しみにしています♪ (2021年7月11日 1時) (レス) id: bea5fb83fd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ナ | 作成日時:2021年7月1日 16時