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「お邪魔、します…」
『とりあえず、ソファ座ってください。あと上着とか色々脱いで』
7月も半ば、暑くなってきたというのに、こんなに高熱なんて。どうやって帰ってきたのかは分からないが、道端で倒れてなくて良かった。
『水、冷えてないほうがええですか?』
「いや…それで大丈夫、ありがとう」
喉を揺らして水を流し込んでいく重岡くん。
『そんなんで風呂入んのは逆に危ないっすよね』
「ん……そうやな、…そうかも」
「適当に着替え持ってくるから、楽な格好しといてください」
何度もごめんとありがとうと繰り返して、くいっとネクタイを緩めてワイシャツのボタンを数個外す。
…なんか、目に毒。
『はい、これとこれ。着てくださいね。あと濡れタオルと乾いたタオル。ちゃんと身体拭いてください。ベタベタして気持ち悪いやろうし…』
「至れり尽くせりやなぁ…ほんまありがとう」
『じゃ、出とくんで…着替え終わったら呼んで』
「えー?別にええのに」
『いいから、ほら早く』
「わーかったって。ちょっと待って」
パタンとドアを閉めて、一旦洗面所へと逃げ込むように入っていって。
『えっと…あ、体温計』
あとなんかあったっけ…と棚を物色していると、閉じていたドアからコンコンと音が聞こえた。
「藤井ー?入ってええ?」
『ちょ、ええけど…座っててくださいよ』
「んー、タオル、ありがとうな」
にへらっと微笑む重岡くんは、いつもより喋りも表情も緩くて、しんどそうな感じ。
『もう…わざわざ持ってこんくてええから、病人は座る!』
「厳しいなぁ…」
『キツいのは重岡くんやろ?黙って尽くされてたらええんやって』
「…なんか、藤井って意外としっかりしてるんやな」
重岡くんの言葉は適当に流して、相変わらず火照った身体を押して無理やりソファに座らせる。
けほっ、と苦しそうに咳き込むからとりあえず買い置きのマスクを渡して、薬を探すも、生憎切らしていた。
『ごめん、薬なんもないからすぐ買ってきます』
「あー…待って、俺持ってる。キャリーの外ポケットの…」
言われた場所を開けると、確かに新品の薬がいくつか入っていて、取り出してから水と一緒に渡した。
『出張先で飲まんかったん?』
「バタバタしてて…時間なかった」
なんて笑ってるけど、笑い事でもなんでもない。
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ナ(プロフ) - ゆうみさん» ゆうみさん、初めまして。とても嬉しいコメントをありがとうございます!少しずつ更新していきますので、最後まで見守って頂けたら有難いです。 (2021年7月11日 23時) (レス) id: db537413ba (このIDを非表示/違反報告)
ゆうみ(プロフ) - はじめまして!すごく面白いです。2人の柔らかい空気が伝わってきて読んでてほっこりします。続きも楽しみにしています♪ (2021年7月11日 1時) (レス) id: bea5fb83fd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ナ | 作成日時:2021年7月1日 16時