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セカンドバッグに入れていた鍵を取り出して、わざとらしく音を立てて玄関のドアを開けると、リビングに居たであろう彼女が驚いた顔で顔を覗かせた。
「え……大毅くん…？」
『…ただいま』
「え、…えっ、あの、」
『ごめん、話しかけんといて』
自分でも驚くほど低い声が出て、彼女が俺から距離を取っていくのが分かった。
正直、あんまり覚えてない。
熱も酷かったし、思考は止まっていたし。
ただ淡々と自分の部屋で仕事に必要なものとその他最低限の所持品を出張で使ったキャリーケースに詰めていって、その後すぐに再び玄関へと戻った。
「ね、待って…行かんといて大毅くん、聞いて」
『…何？』
「違うねん、あの人は…」
『あの人って誰？』
「…え？」
怒っているのか、悲しいのか、自分でもよく分からなくて。ただ…もう俺はここには居られない。
「…もしかして誰も見てない？」
『見てないって言ったら？』
「…………」
『見てないって言ったら誤魔化すん？やっぱり何でもないって言うつもりか…？』
「……っちが、ほんとに、ただの知り合いで…」
『ただの知り合いとキスするような女やったんか？お前は』
その言葉に彼女は涙を溢れさせて、膝から力が抜けたように座り込んでしまった。
『…信じた俺が馬鹿やったな』
「……っ、なん、」
『もう、俺の事は忘れて』
投げ捨てるように鍵を床に転がして、部屋を出た。
涙のひとつ零れない自分にも気づかず、外の少し蒸れた夏の空気がじとっと纏わりついてくる。
『…っ、はぁ…』
もう日はとっくに沈んでいて、相変わらず突き刺すように響く頭痛に顔を顰めて。
行く宛てもなく飛び出してきて、身体も精神もボロボロの今、もう何も考えることが出来ずに歩道の端で蹲ってしまった。
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ナ(プロフ) - ゆうみさん» ゆうみさん、初めまして。とても嬉しいコメントをありがとうございます！少しずつ更新していきますので、最後まで見守って頂けたら有難いです。 (2021年7月11日 23時) (
レス) id: db537413ba (このIDを非表示/違反報告)
ゆうみ(プロフ) - はじめまして！すごく面白いです。2人の柔らかい空気が伝わってきて読んでてほっこりします。続きも楽しみにしています♪ (2021年7月11日 1時) (レス) id: bea5fb83fd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ナ | 作成日時：2021年7月1日 16時
