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お腹が空かないとかなんとかで、コンビニで買ったサンドイッチには一切手をつけていない重岡くん。
スマホをずっと眺めているけど、目がぼーっとしてきたかと思えばウトウトと船を漕ぎ始めて。
『重岡くん?…眠いん?』
「……ん、大丈夫」
『寝ててええですよ、あと15分くらい休憩ありますよね?俺起こします』
「や、ほんまに。大丈夫。起きる。」
『無理でしょ…めちゃくちゃ眠そうやし』
無理しないで寝てください、と言っても、頑なに顔を伏せたがらない重岡くん。
『…ぶっ倒れるで、午後』
「午後そんな忙しくないし…」
『ご飯も食べずに寝不足は一番あかんって』
「うーーっ…」
椅子をガタッと重岡くんの横に寄せて、背中をとんっと押していけば、抵抗せずテーブルへ突っ伏していった重岡くん。
「ちょお…ほんまに寝てまうやんかぁ、」
『やから、寝てください。昨日あんま寝てないんでしょ?』
「ん………10分で起こして…」
何をそんなに気にして眠るのを嫌がるのかが謎ではあったけど、やっと寝る体勢に入ってくれた重岡くんに安堵する。
このまま放っておいて、午後に倒れたなんて聞いたらたまったもんじゃない。
『分かりました、起こしますね』
「…ふふ、やっぱなんか落ち着く匂いすんなぁ、藤井」
『はぁ…?柔軟剤じゃないですか?つか、早く寝て!』
「あーっ、わかったって…」
そのままトントンと一定のリズムで背中を叩いていると、ものの数秒で聞こえてきた静かな寝息。
…別に、洗濯にこだわりはないし、いい匂いですね!なんてそんなに言われる訳でもないし。
褒められたって特別嬉しいことではないはずなのに、この人に言われるだけで、俺にとっては特別以上の言葉になる。
すうっと気持ちよさそうに眠っている顔は、案の定いつもより少し疲れているように見えて。
思わず頭を撫でそうになってしまったけれど、周りの視線を気にしてその手はすぐに引っ込めた。
『…俺じゃ、あかんのかな』
そう呟いた直後、先程見せてもらった重岡くんの彼女の顔が頭をよぎった。
綺麗な女の子と、後輩以上でも以下でもない俺。
勝敗なんて、目に見えていた。
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ナ(プロフ) - ゆうみさん» ゆうみさん、初めまして。とても嬉しいコメントをありがとうございます!少しずつ更新していきますので、最後まで見守って頂けたら有難いです。 (2021年7月11日 23時) (レス) id: db537413ba (このIDを非表示/違反報告)
ゆうみ(プロフ) - はじめまして!すごく面白いです。2人の柔らかい空気が伝わってきて読んでてほっこりします。続きも楽しみにしています♪ (2021年7月11日 1時) (レス) id: bea5fb83fd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ナ | 作成日時:2021年7月1日 16時