変人野郎を黙らせるには。 (ページ8)

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大丈夫、とは言ったものの

初めて異性に触れてしまったためか、

驚いたためか、動けずにると

ぱっと手を離し、

「今のは、セクハラ？！」

どうしようごめん！と焦りだすから

そこかよ！なんてつっこみたくなる。

思わず笑みが漏れてしまい、

肩を震わせて笑うとつられて笑う彼。

「はは、何で笑うの？僕びっくりしたんだけど」

「なんか、変で…ふふ、」

「助けた恩人に変てなんだよ～、こら」

ごめん、と小さく漏らすも

ツボに入ってしまったそれは

未だに笑声を響かせる。

どれくらいの間そうしていただろうか、

廊下から数人の足音と共に

話し声が聞こえる。

ガラリとドアが開けば

短くしたスカートに着崩したワイシャツ。

高く女の子らしい声が、

目の前の彼に向けられた。

「いたー！王子！どこ行ってたの？探したよ～」

「佳奈、ごめんごめん」

いかにも女の子らしい声の主が

王子、と呼ばれる彼の元へ近寄る。

視線を向けると

ちら、とこちらへ大きな目が向けられる。

目が合ったのもつかの間、

すぐに彼の方を向くとにこりと頬を緩める。

「次の授業で使う教科書

貸してって朝言ったじゃん！」

「あれ、そうだっけ～。

忘れてた、ごめんね」

もう！なんて怒った顔をすると

彼が乾いた笑いを漏らした。

窓から差し込む光が強く

床から反射して眩しい。

ぼんやりと外を眺めていると

昼食を終えた学生たちの声で

騒がしくなる廊下。

「棗ちゃんごめん！もう行かなきゃ、」

と先を行ったらしい女の子を追うように

急いでドアへ向かう。

「＿＿＿＿＿ね、！」

ぱっと、振り返って手を振りながら

発した彼の言葉は

誰かの大きな声に混じって

届くことはなかった。

呼びつけておいて最終的に

置いてきぼりにするなんて。

しかも最後何と言ったのかさえ

わからないもやもやをかき消すように

お弁当のおかずを口に運んだ。