変人野郎を黙らせるには。 (ページ4)

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「入部したいんだ」

真剣な眼差しで見つめたかと思えば

ふ、と目を細めて笑った。

図書部に入りたい。

そうはっきり口にした彼。

「だめ？」

見つめるを通り越して凝視していた私に

気付けば乾いた笑声を漏らし、

やっぱそっか～なんて呟きながら

困ったように眉を下げた。

「そんな顔しないでよ。」

ただの無表情ですけど。

無表情をそんな顔なんてくくられて

失礼極まりない。

どんな顔をしていたというのだ。

笑おうとしてもこの男の前では

どうしても引きつるだけなのに。

目線をどこへやれば良いのか

わからなくなって、

うつむいた途端、

「だから、そんな顔しないの」

「っ！？」

眉間に指先がつんつんと、触れた。

驚きのあまり背中を仰け反らせる。

あまりにも簡単にパーソナルスペースへ

踏み込む彼を

思い切り睨めば首を傾げて

満面の笑みで。

「良いよね？」

吐息が当たりそうな程の距離まで

近寄った顔に息を飲んだ。

「顔真っ赤」

こいつ…！

含み笑をしたような、

笑ってるのに、馬鹿にしたようなそいつに

とてつもない腹立ちを覚える。

「帰る！」

「あ、待って」

「知らない」

案の定、可笑しそうに笑う

その姿にまたイライラが込み上げる。

まあまあそうカリカリしないの、と

ケタケタと笑っては

「名前、教えてよ」

「…」

「僕、陽です、よろしくね」

どこから出したのか、黒い油性ペンを

私の手を取り手の甲に『陽』

という文字を滑らせていく。

抵抗する暇もなく書き終わってしまった。

500円玉くらいの大きさに書かれた

それは、良く目立つ。

「うん、達筆。」

呑気にキャップを絞めながら

手を握ったまま満足気に手を見詰めた。

あり得ない。

手でゴシゴシと擦っても

ほんの少し滲むだけで黒いインクは

落ちてはくれなかった。

「あり得ない！」

なんでこんなに全てが

こいつのペースに流されるんだ。

完璧に私の流れを持っていかれてる。

昨日会って話しただけで

一気に距離が『陽』とかいう奴に

よって縮められていく。

スクールバックと

読みかけの本を奪うように取り上げ

図書室を出た。

あああ。

なんだなんなんだ、ああもう！

うざい！！

時計を見ると

いつも帰る時間より

随分早い時刻を指していた。