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「おはよ」

「咲、おはよ」


私の数少ない友人、咲。

明るくハキハキした性格で

友人が多い。

高校で初めて出来た友達で

学年が上がり、クラス替えをしても

また同じクラスなれたのだ。


「昨日帰り雨凄かったよね、

私傘忘れてずぶ濡れで帰った」


あははと能天気に笑う彼女。

すると周りから笑い声が聞こえた。


「その咲想像できるわ」

「棗はちゃんと傘持ち歩いてそう」

「あははたしかに」


誰とでも分け隔てなく接する

彼女の友達になれた事で

私にも友達が増えた所がある。


「そういえば咲、」


言いかけるが

途端に響く黄色い声に遮られた。


数人の女の子たちが

窓の外へ歓声を送っている。


「王子せんぱーーい!」

「きゃあー!」

「朝からかっこいいやばい!」


王子、と聞き慣れた

人物の呼び名につられて

ふと、窓の外へ視線を向けてしまう。


そこには数人の男子生徒と共に

笑い合うあの変人、

間違った、

あの人。


女子生徒からの呼びに

気付いたのか、顔を上げると

何事も無かったかのように

話し相手へと向き直る。


王子と呼ばれるくらいだから

いつも以上ににこにこと

王子様みたいな

反応をするものだろうと

思っていたが、素っ気ない。


それでも尚、教室内の

きゃぴきゃぴした声が

静まる事は無かった。


「今日も凄いな〜王子」

「え、咲知ってるの?」

「え?逆に知らないの?!」

「ええ、あ、うん」

「そういうの興味無さそう

だったもんね、棗」


納得、とでも言うように頷くと

窓の外へと視線を向ける咲。

つられてまた私も目を向けた。


確かに興味は無いが、

知らない訳でもない。


昨日は結局2人で雨が止むのを待っていた。


大きな本棚を背に

並んで座り、静かに

雨と雷の音が無くなるのを

待っていた。


肩と肩がぴたりと触れ合って

離れたらまた1人になって

しまうんじゃないか、

なんて考えて、その温もりから

離れられずにいた。


それを知ってか、何も言わず

窓側にいた彼はずっと窓の外を

見ているだけだった。


不思議と不安な気持ちは

姿を見せなくなった。


そんな昨日の彼とは

違う雰囲気を纏う彼に

違和感。


「陽、」


小さく小さく彼の名前を呼ぶ。

と、


「っ」


ばちり、目が合う。

嬉しそうに目を細めたのがわかった。

途端、びっくりして勢い良く目を逸らす。


まさか、

まさかだ。

私の呼び声が聞こえたのか?

いやそんなまさか。


「(まさか)」

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作者名:Ritz | 作成日時:2013年11月6日 22時

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