変人野郎を黙らせるには。 (ページ13)

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「おー凄い雨だな」

「ほんとだ、雷落ちそうですね」

時計の針が4時をちょっと過ぎた頃。

静かな図書室で

図書部の活動と称した

活動、もとい掃除をしていれば

雨音に混じって聞こえた

低く気怠そうな声。

声の主は窓から外を

ぼんやりと眺めていた。

「先生、仕事無いんですか」

「図書部の活動を見守るのが

俺の仕事です～」

「(図書部、)」

元々そんな部活動は無いのだけれど

この本好きな担任が

勝手に決めて勝手に呼んでいる為に

いつの間にか

放課後に図書室での読書が図書部として

放課後の活動が容認されていた。

パタパタと本の上の埃を

落としていれば、

僅かに感じる視線。

「、何ですか」

その先へと目を向けると、

「いや、吉野さ、ちゃんと飯食ってる？」

「」

真顔でこちらを見つめ、

うーん、と考え込むように顔を顰めている。

「昨日吉野を支えた時、

軽くて折れそうだなーと思ってさあ、」

年頃の女の子に対してその台詞は

失礼すぎる、とは思うのに

心配されて嬉しく思う自分もいる。

何も言えず黙ったままでいると

「吉野？」

「、！」

そ、と心配そうな顔で覗き、

黒縁の眼鏡越しに

こちらを見つめる黒い瞳と

目が合ってしまった。

ドクリと大きく鳴る心臓。

「は、え…え？」

「たくさん飯食えって言ってんの」

ぽんぽんと軽く頭を撫でた手から

体温が伝わってきて、

心臓の音が更に強く鳴る気がした。

「馬渕先生、」

「ん？」

発せられた声は雨音に混じって

低く響く。

あまりに優しく聞こえる

たった一言のそれに

余計、次の言の葉が出ず。

「、この前、図書部に入りたいとか

なんとか言ってる人、いましたよ」

「ん？…、あ～！もしかして桜田？

あいつ本当に…クク、」

サクラダ？

一人クスクスと可笑しそうに笑う。

何がなんなのか。

よく分からない状況にさせられた所で

「あいつ、3年の桜田陽っていって

運動出来るくせに運動部入らないで

放課後の時間が暇だとか言ってたから

俺が図書部入れよって誘ったんだよ」

「、へえ」

「嫌がってたけど、

吉野がいるって言ったら

入りたそうにしてたな」

「」

サクラダハルと呼ばれるあの脳内花畑の男。

あれを私の所へ仕向けたのは

もしやこの人物だったのか、なんて。

ムス、と顔を歪めると

埃を落とす手にも力が入る。

にやにやと頬を緩ませる先生を

じとりと睨めつけた。

全然嬉しくないですけど。