変人野郎を黙らせるには。 (ページ12)

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「さいなら王子」

嫌味たっぷりの台詞が

乱暴に投げられる。

それが何故か嫌じゃない。

「さようなら棗ちゃん

気をつけてね」

彼女が去った方を見据えると

教室に一人残されてしまい

ふわぁ、なんて欠伸が出る。

さっき触れた彼女の髪の毛が柔らかくて

さらさらしていたな、なんて

考えては大きな溜め息。

先程のセクハラ紛いな事は

もう自分でもよく分からない程

思い切った行動だったのは

わかっているつもりだが。

いや、あの一瞬で少しでも俺を

意識してくれたらいいななんて

下心があったのは確かだけど。

「はああーーーー、」

近すぎる距離で、

俺を見据えると動揺するように

小さく揺れた大きな眸。

寄せられた眉は

怒りや困惑よりも

どちらかといえば、

僅かな含羞に近いような気がした。

「(ずるいなあ、)」

思い出すのは

じわりと赤くなった頬。

そんな気がする、とだけ。

窓から差し込む夕日が

そう見せただけかもしれないし。

勘違いかもしれないし。

どこからかまた

女子生徒の声が聞こえた。

「(忘れてた、)」

ある人物との約束を思い出し、

廊下へ出ると吹奏楽部の

演奏が聴こえてくる。

向かうのは、

3年の札が掛けられた

自分の教室。

窓を開けているのか

ふわりと風がふいている。

「いたー！王子！」

「あんたどこ行ってたんだよ」

「佳奈があんたと一緒に帰るって

うるさいんだよ、もう」

数人の女子生徒と共にいる

佳奈と呼ばれる小柄な女の子。

む、と拗ねた顔を向けたられた。

「俺のことを探してる声

廊下まで聞こえてたよ。」

「聞こえてたんなら早く出て来いよ」

「佳奈と一緒に帰るって

約束してたんでしょ」

次々と続けられる

不満の声に混じって

小さく聞こえた

どこ行ってたの、という声。

「帰ろうか、佳奈」

問いには答えないまま、

一緒に帰る約束をしていた子、

佳奈と呼ばれたその子へと

目を向けると

こくり、小さく頷く。

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このままじゃ女タラシでチャラい男のイメージがついてしまいそうですね、王子。
すみません、、