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ちら、と咲の背後へと視線を向ければ

騒ぎを聞きつけた数人の生徒達。

一体何事?と騒がしい質問に

丁寧に答える余裕は無い。


「この前も王子に

追いかけられてなかった?

どういう関係なのよ」


それに気づいたのか

小さな声で耳打ちする咲。

どこかキラキラした表情に見える。


どんな関係かと聞かれても

どんな関係でも無いのだから

説明しようがない。

まあ、


「先輩と後輩かな」


呆れた表情でこちらを見る咲。


「彼氏できたのかと思ったわ」


“彼氏”の単語にギョッとした。

恋人同士になってしまったら

ずっとあの男のペースで過ごすなんて

想像したら目眩がする。


「私をネタに楽しもうとしないでよ」


それに彼を慕う女の子の

恨みを買いそうな気がする。


と、思い出すのは

図書室へ彼を迎えに来ていた

可愛くて女の子らしいあの人。


いや、

私には関係の無い事、

うん、そう。


半ば言い聞かせるように

心の中で呟く。


「そういえば馬淵先生が

棗の事呼んでたよ」

「えー」

「図書部の事じゃないかな、

放課後来るようにって」

「わかった」


図書部の話なんて滅多にしないのに、

何があったのだろうか。


放課後、職員室へ足を運ぶと

ぐったりとデスクへ突っ伏す先生。


先生が生徒にそんな姿を

見せていいんですか。


先生、なんて声を掛けると


「お、来たな〜図書部のエース」


やややつれた顔こちらへ向ける。


図書部は私ともう一人しか居ないのに

エースも何も無いでしょうが。


渡された一枚の用紙へと目を落とすと

『長期休みに伴う本の貸し出しについて』

と長い一文。

それだけで何事か察してしまう。

ああ、と口からぽろりと溢れた。


大きな溜め息を吐く目の前の人物。


「今年もこの時期がやってきたな」

「そうですね」


明後日の方を向きしんみりと

口にしたそれに答えると

複雑な表情をしながら

頑張れよなんて励まされる。


図書部の仕事なんて、

貸し借りされる本の管理程度。

そもそも学校の組織の一部に

図書委員も存在しているが

お互いの仕事内容に境界は無い。

強いて言えば、

本の事なら図書部の方が

詳しい程度だろうか。


そうだ、

新しい本でも借りて帰ろうかな。


職員室を出て

図書室へ向かう途中の廊下。


目の前の女子生徒がドアから

図書室の様子を覗いていた。


本、借りに来たのかな。

と。


「あ、王子!」


少し焦った声で

聞き慣れた名前を呼んだ。

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作品ジャンル:恋愛, オリジナル作品
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作者名:Ritz | 作成日時:2013年11月6日 22時

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