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その日の朝は、昇降口に被身子さんがいなかった。
さらに、教室の近くまで行くと、いつもより喧騒が耳につく。
何事かと少し足を速めて教室へ入った。
そこには、
「キャアア――――!!!!」
「やばいって…先生呼ばなきゃ…!!」
混乱するクラスメイトと、
「ひぃっ…やめろ、来るな…!」
血を流しながら怯えている男子と、
「…遥ちゃんに謝って。気持ち悪いとか気味悪いとか、そう言ってたの聞こえたんだよ。ねぇ、ほら早く。じゃないと、…口利けなくしちゃうよ」
その男子と向かい合い、ナイフを構えてにっこり笑っている被身子さんがいた。
「もー…時間切れっ」
「ひ、」
被身子さんがナイフを振り下ろす。反射的に脚に力を込め、被身子さんと男子の間に割り込み、ナイフを素手で掴んで止める。
普段の怪我なんかの比ではなく、手のひらから血が流れる。
そこでようやく、彼女は私が登校したことに気づいたようだった。
「あ。遥ちゃんおはよう!」
「…おはようございます、被身子さん。…これはどういうことですか」
個性上”血液”や“刃物”に対する考えが違うといっても、他人を傷つける理由にはならない。
私が掴んだ瞬間からナイフは威力を失っていたので、ゆっくり手を開いてナイフを開放する。
被身子さんはナイフについた私の血をぺろりと舐めた。一方、私はなかなか深めの傷に自分でも少し引きつつ、心臓より位置を高くして圧迫止血を試みる。
「その人がね、遥ちゃんのこと悪く言ってたの。だから、謝ってもらえるようにちょっとお願いしたんだぁ」
“ちょっと”でも、“お願い”でもなかったと思うのだが…。それに、精神が体に見合っていないのは理解しているため、一部から多少は悪罵されるとは思っていたので、私自身はそこまで傷つくことはない。
「…私は気にしてませんから。ナイフ、しまってください」
「ん〜…遥ちゃんがいいなら、いいけど。あ、でもナイフについた分の遥ちゃんの血は美味しくいただくね!!」
そんな会話をしていると、誰が呼んだのか先生が数人来て、私は治療へ、被身子さんは事情聴取へ連れていかれた。その日の午後には二人とも授業に戻れたが、私が怪我をしたと家族に連絡が行ったとき、家族、主に鋼兄さんにものすごく心配された。
兄曰く、
「…お前は素性の分からないやつらに好かれる質だ…(俺が、守らなければ…)」
次の日、被身子さんは転校したとHRで聞かされた。
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らべんだー - いつも楽しませていただいてます!アリババ君は出てくるのでしょうか、、出てきてほしい!です! (2020年5月6日 1時) (レス) id: e9a4cf0eda (このIDを非表示/違反報告)
AYAAYA(プロフ) - 握力で測定器へし折りそうだねー (2019年6月22日 17時) (レス) id: df90ade64c (このIDを非表示/違反報告)
李鈴(プロフ) - あぁぁ、最っ高!こういうの欲しかったんです!ありがとうございます(><) (2019年2月12日 9時) (レス) id: ff3f8f1243 (このIDを非表示/違反報告)
操菜 荘椏(プロフ) - 続きが気になります!頑張ってください! (2019年1月8日 22時) (レス) id: 973a3c6c76 (このIDを非表示/違反報告)
やっかちゃん(プロフ) - 夢小説読みまくった私にとってはそんなに違和感は感じないですが、作者さんの好きな風に書くものですから、今考えてるという案で全然問題ないと思いますよ!最後に、ヒロアカの推し全く一緒でした嬉しいですいつも楽しく読んでます更新楽しみにしてますね! (2018年11月6日 23時) (レス) id: 37cb2170f5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:灰猫 | 作成日時:2017年8月28日 6時