044 ページ45
.
捨てるな、そう言いながらまた私を捕らえて離さないベクちゃんの視線。熱かった、その瞳から注がれるものが。やっぱり、苦しい、
「あんな部屋に、俺居れないんだよ、･･･」
「全部、無くなって、」
「それで気づいちゃいけないのに、もう遅いのに、っ･･･」
「Aのこと、」
やめて、嫌だ、それ以上何も聞きたくない。それでもベクちゃんとの視線は交わったまま。こんな辛くなかった、ベクちゃんと視線が合わさる時はいつも幸せで笑えてて、なのに何で？
どうしてこんなに苦しいくらいに、私達、なっちゃったんだろう。
『やめて･･･』
「A、最後まで言わして、」
『嫌だ、なんで？』
「･･･俺も嫌だよ、嫌だ、」
『っ、』
「腐れ縁の所になんて行くな、やだ」
「俺のこと好きでいてよっ、･･･」
.
.
.
「Aのことが好きなんだよ」
出てきて欲しくない時こそ、涙は止まることを知らないのか、溢れては止まってくれない。思い出したくない記憶こそ、思い出してしまう。捨てた物を掘り返す人なんていないでしょ？そう思ったのは自分なのに、
なんで？私のしたこと間違ってたってこと？捨てるのが悪かったって？
結局は思い出すんだから、無理だってこと？
『べ、くちゃん』
「A･･･」
久しぶりの優しい音色、ベクちゃんが私の名前を大好きだったその優しい声で呼ぶ。
ねえ、ベクちゃん、なんで？私間違えてる？
『ベクちゃん、私、間違えてる？』
「え･･･？」
『私がしたことは、いけないこと？』
「･･･」
『なんでこんなに苦しくなるのっ･･･』
『間違ってないよ、だってベクちゃんが悪いんだもん』
『私は私が望んでこうしたんだよ』
『今更そんなの遅いよ、』
いつの間にか今度は私の視線が下がっていて、それと同時に頬に垂れることなく重力でテーブルに落ちる涙はあふれて止まらなくて。
そっと頬に温かい体温が触れる。捨て終わる前にずっと望んでいた体温。私の事を好きだと指先から伝わるベクちゃんの体温をずっと、ずっと望んでいた。
その手につられて顔を上げる、次の瞬間には、テーブルに身を乗り出しているベクちゃんの顔が目の前にあって。
ああ、今日が最後だ。今日が最後だから。
ベクちゃん、条件付け足してもいい？今日が最後だから、この最後にベクちゃんに愛されていたという事実を私にちゃんと教えて。
互いの跡を残して、互いに捨てよう。
- 金 運: ★☆☆☆☆
- 恋愛運: ★★★☆☆
- 健康運: ★★★★★
- 全体運: ★★★☆☆
ラッキーアイテム
革ベルト
おみくじ
おみくじ結果は「末凶」でした！
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1101人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
りん(プロフ) - 百川さん出来れば、消さないで欲しいです。思い出の物とその時の気持ちを捨てるって難しいですね… (2020年2月6日 20時) (
レス) id: 1dd6c0734d (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - 仕方ないです。少なくとも、時間がかかりますね。アイドルが結婚これは、永遠の課題。 (2020年1月19日 20時) (レス) id: 1dd6c0734d (このIDを非表示/違反報告)
かおる(プロフ) - すごく分かります！またお会いできることを願っております！ (2020年1月18日 23時) (レス) id: a54c710a34 (このIDを非表示/違反報告)
志乃(プロフ) - 来年の更新楽しみにしてます！ (2019年11月7日 1時) (レス) id: b8cc8aaaa6 (このIDを非表示/違反報告)
ゆな - こんにちは。 来年まで楽しみにしています！ (2019年11月6日 8時) (レス) id: c3cca9217a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：百川 | 作成日時：2019年4月14日 0時
