Another trip over the wall3[東京リベンジャーズ]

Crying ページ7

突き飛ばされた、と気づいた次の瞬間には、オレは目の前にいたやつを殴ってノシていた。


こんなクリスマスイブに人を突き飛ばすなんて趣味が悪ぃ。
慌てて、Aが無事かを確認する。


その時、オレは気づけなかった。ソイツの手に血塗られた包丁が握られていたことに。


Aの方を見た時には、もう既にあいつの腹は赤く染っていた。


オレの目の前で、あいつは口から血を吐いて、地面にうつ伏せになって倒れた。


このままだと、あいつは死ぬ。助けなきゃいけない。オレは慌てて警察と救急車を呼んだ。


急いでAの方に駆け寄る。
救急隊に絶対に動かすな、と言われたのでうつ伏せの状態のままにしておく。


「A、しっかりしろ！今警察と救急車呼んだから！だから、死ぬな！おい！」


オレの声に対する反応が、もう鈍くなっている。

やめろ。死ぬなんて、言うんじゃねぇよ。


「何バカなこと言ってんだよ！」

「いいんだよ、ケイスケ。自分の死ぬ時は…自分が一番わかる。」


そう言って笑うA。
そんなこと言うなよ。絶対、オレが助けるから。



「…ケイスケ。」


名前を、呼ばれた。掠れた声だ。


「もう少しで救急車来るから、辛抱しろ。」


そう励ましの言葉をかける。
Aはありがとうとでも言うように笑うと、ポツ、ポツと語り始めた。


「あの時さ…声をかけてくれなかったら、私は…あのままダメになってたかもしれなかった。」

なんで、こんなタイミングでそれを振り返るんだよ。
またいくらでもその話、できるだろ？


「君が、私に勇気をくれたんだ。」


やめてくれ。オレの目の前で、死ぬなよ。
目から涙がこぼれるのを感じる。

2.→←Confort me

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す