Allusion ページ44
ドラケンは、病院を出ると1人ため息をつく。
佐藤Aと言えば、ウチの中学ではマイキーと同じくらいの有名人だ。もちろん、良い意味で。
いつでも成績は1位で、先生の言うことをよく聞く女。ずっと勉強してる。都立で1番いい高校も余裕で目指せるって噂だった。不良とは、対極のようなやつだ。
そんな奴が、まさか。
思えば、あの揚げパン事件の時からだった。
あの後、あいつのクラスメイトに話を聞いた。
そいつ曰く、いつものAならあんなことしない。
まるで人が変わったようだった、と。
あの日から、まるでAの人格が2つあって、入れ替わってんじゃねぇかと思えるような日々が続いた。
マイキーが訪ねても勉強があるから関わるな、と冷たくする日もあれば、あの時みたいに全く違う行動をとる日もあった。
もしかしたら本当に…いや、流石に馬鹿げている。
頭殴られておかしくなったか、とその考えをドラケンは振り払った。
またひとつ、ドラケンはため息をつく。
実は、彼はAに隠していることがある。
マイキーのあの取り乱し方について、ドラケンは心当たりがあった。
大切な人を失った時だ。
あれ以来、マイキーはやたらAの話をするようになった。
Aと話している時は俺も少々引くくらい楽しそうだし、この間なんかAと武蔵祭り行けねえかなってボソッと言っていたのを聞いてしまった。
マイキーの口からそうだとは聞いていないから、確信は持てない。
ただ、Aが同じ意思を持たない限りは、俺はこのことを隠し通さなきゃいけないと思う。
俺たちと関わった以上、ただでさえAには危険が付きまとう。これで、もしマイキーの気持ちが俺の予想通りで、それが外部に知られてしまったら?
Aに平穏は無いだろう。
Aは不良じゃない。
俺たちの喧嘩に巻き込まれることはあってはいけない。
ただ、マイキーはこれからもAに絡み続けるだろう。危険は免れまい。
せっかく仲良く(?)なった事だし自分が守っても良いが、それでも限界がある。
ドラケンはしばらく思案した後、ケータイを取り出してキイを叩く。要件を済ますとケータイを閉じ、ほう、とひとつため息をついた。
自分のこのアプローチがどう転ぶかは分からないが、とりあえずマイキーとA、両方の為にはなるだろう。
ドラケンはケータイをポケットに仕舞うと、バイクに乗り渋谷の街へと走り出した。
112人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「東京リベンジャーズ」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
駅前でよく売ってるわらび餅(プロフ) - 作者の推しはマイキーとエマちゃんです。 (2021年9月4日 22時) (レス) id: d64e30d257 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:駅前で売っているわらび餅 | 作成日時:2021年8月24日 18時