8:勝負 ページ8
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「……あれ。なんでこうなったんだっけ」
今にも繰り広げられようとしている勝負戦。高木先生が砲丸のチェックをしている中、俺はというとこの数分の出来事を思い出していた。
確か、急に現れた高木先生が悠仁を陸上部員にしたいとかで勝負を持ちかけて…負けたら諦める的なことを言っていた気がする。それで悠仁も勝負に乗って、俺はオカ研の2人に連れられてここに来たはず……俺あの人苦手だからあんまり関わりたくねーんだけど。
「14m!!」
「スゲー高木、全然現役じゃねーか!どーする虎杖!」
14m…14mねぇ。何が凄いのかよくわからんが、なんか凄いらしい。興味ねぇけど。
次は悠仁の番らしく、周りには虎杖コールが鳴り響いている。
俺もやろ。いけー、ゆーじー。
「ねぇ、虎杖って有名なの?」
「眉唾だけど、SASUKE全クリしたとか、ミルコ・クロップの生まれ変わりだとか」
「死んでねえだろミルコ」
隣からはヒソヒソとこんな声も聞こえて。
あらら、俺の悠仁結構人気者?まぁ、確かに人誑しだし、あんなに良い子だったらみんな好きになっちまうよなぁ。俺の弟だけど。
つか、西中の虎って。そんなあだ名ついてたの悠仁くん。全然怖くねぇし、むしろかわいいし。マスコットみたいじゃん。
けどまぁ、虎っつーより……
「うわ、相変わらずだな。30mくらい?」
ゴリラだな。うん。
昔から人並外れすぎてたもんなぁ。運動会は絶対1位だし、鬼ごっこは木の上まで逃げるし、ほっとくと一日中山の中走り回ってるし。ほんとに人間やめてると思う。
でもそれを鼻に掛けないのが悠仁なんだよ。マジで良い子。さすが俺の弟。
「悠仁お疲れー」
「おう。楽勝よ」
悠仁が手を出したのに合わせ、軽くハイタッチする。
オカ研の2人は悠仁に無理して残らなくていいと言ったが、悠仁は首を横に振った。
「先輩らがいいならいさせてよ。結構気に入ってんだ。オカ研の空気」
そう言った悠仁の表情に嘘はない。2人も満更でもなさそうだった。そういや、悠仁が友達と仲良くしてるとこ久しぶりに見たかも。
やっぱり若人には青春が必要だな。
「ああっ!もう半過ぎてんじゃん!」
リュックを背負うと、最後に俺達の方を見て手を振り駆けていった悠仁。
じーちゃんの見舞い、か。本当なら俺も一緒に…はぁぁぁ、クソが。
「あーあ、俺もそろそろ戻らなきゃな。オマエら気をつけて帰れよ〜」
ポン、と2人の肩に手を置いて忌々しい職員室へと向かった。
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朝茶(プロフ) - もぶさん» ありがとうございます!そう言っていただけるとますます頑張れます!これからもよろしくお願いいたします!! (2022年9月19日 21時) (レス) @page20 id: 6d4df1d25a (このIDを非表示/違反報告)
もぶ(プロフ) - この作品すごい好きです!更新頑張って下さい!! (2022年9月19日 15時) (レス) @page19 id: 38a56b994f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:無季 | 作成日時:2022年7月9日 21時