検索窓
今日:2 hit、昨日:5 hit、合計:53,016 hit

39:葛藤 ページ39

.
 




任務帰り、喉が渇いたので潔高にコンビニに寄ってくれと頼み、どうせなら少し休んでいこうと店の前で佇む。





「ん、ブラックでよかったか?」

「はい、ありがとうございます……あの、瀬川さん」

「何?」

「私、この仕事向いてるんでしょうか」

「…なんで?」

「私達の仕事は人助けです。ですが、学生を危険な現場に送り出して、剰え一生残る傷を背負って帰ってくる彼らを見ると、どうしても考え倦むところがあるんです」





悠仁の件のことだろう。潔高は昔から慈悲のある奴だったが、精神面は決して強いとは言えない。本人もそれをわかっていて、補助監督への道を選んだ。

補助監督は戦闘が禁止されている。だから必然的にサポートに回ることになるし、仕事を続ければ自分よりも若い呪術師を見送ることも、時には凄惨な姿になって帰ってくる姿を見ることだってある。それは時に、己の無力さを痛いほど感じさせるものでもある。





「オマエの言うことはよくわかる。教師にも似たようなことはあるからな」

「……」

「生徒同士のいざこざ、年頃の悩み、親や教師への嫌悪、失敗、挫折、後悔……救ってやりたくても教師(俺達)にはどうしようもないこともある。教師の仕事はあくまでもサポートだからだ」

「……えぇ」

「もちろん解決してやることもできる。その気持ちも大切だ。限度はあるがな。でも、全てを解決してやることが救いになるわけじゃない。大切なのは、自分にできることを自覚してやり遂げること」





俺だって、伊達に教師を続けてたわけじゃない。

自分にはなかった、できなかった失敗や後悔をする姿は見ていて辛いものもあるし、理解できず何もしてやれない自分もいた。


だからといって自分はこの仕事に向いていない、辞めたいとは思わなかった。結局自分にできることはこれだと見つけること、そしてそれを全力でやり遂げることしかできないのだと。全てを変えようだとか、解決しようだとか、そういう希望を持つのもいいだろうが、年を重ねれば嫌でも自分の限界に気づくことになる。


だが、悩むのはいい。

悩むということは、向き合っているということ。
そこには大人も子供も関係ない。





「オマエのその葛藤は必要だ。これから先、補助監督を続けるためにもな」

「……すみません。瀬川さん」

「謝るくらいなら感謝しろよ。後輩は先輩に甘えとけ」

「…ありがとうございます」





そう言うと潔高は握りしめていたコーヒー缶をぐいと飲み干して、先程より幾らか落ち着いた表情で微笑んだ。





.

40:地下室→←38:忌み物



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (46 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
117人がお気に入り
設定タグ:呪術廻戦 , 虎杖悠仁 , 五条悟
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

朝茶(プロフ) - もぶさん» ありがとうございます!そう言っていただけるとますます頑張れます!これからもよろしくお願いいたします!! (2022年9月19日 21時) (レス) @page20 id: 6d4df1d25a (このIDを非表示/違反報告)
もぶ(プロフ) - この作品すごい好きです!更新頑張って下さい!! (2022年9月19日 15時) (レス) @page19 id: 38a56b994f (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:無季 | 作成日時:2022年7月9日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。