36：夢 ページ36
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悠仁の体は硝子によって解剖されることが決まった。どうして宿儺の指に耐えうる器となったのか、その原因を調べたいそうだ。
特にすることも考えることもなく、黙々と準備を整える硝子の姿を見ていた。
「家族なんて言う割には悲しそうじゃないね」
「んー…あぁ、そう見える？」
「僕にはね」
「……まあ、正直自分じゃよくわからん」
大切な人がこの世を去った時、人は悲しむ。涙を流すこともある。
それは知っている。じーちゃんが死んだ時の悠仁は泣いていた。小学校の同級生は飼っていた犬が死んだ時も泣いていた。どこかの作家は心に穴が空くようだと言った。
けど、俺はそれが理解できなかった。
死も、その痛みも、俺には──
「そう……僕はさ、性格悪いんだよね」
「知ってます」
「伊地知、後でマジビンタ」
「マ…マジビンタ？」
悟なりに気を遣ってくれたのか、それ以上深くは聞いてこなかった。
俺も割り切って今更だろ、と内心突っ込んだ。同じく気を利かせてくれたであろう潔高はあとでマジビンタされるらしいけど。
「教師なんて柄じゃない。そんな僕がなんで高専で教鞭をとっているか、聞いて」
「なんでですか…？」
「夢があるんだ」
「夢…ですか」
「そっ。悠仁のことでも分かる通り、上層部は呪術界の魔窟。保身馬鹿、世襲馬鹿、高慢馬鹿、ただの馬鹿。腐ったミカンのバーゲンセール。そんなクソ呪術界をリセットする」
「リセット、ね…」
確かに呪術界はクソだ。前も言ったが、10代の高専生に監視と称してカメラまでつけようとする奴らだ。クソだろ。どこまでも保身のことしか考えてねぇ。我が身が一番って奴ばっか。
高専時代から悟が上の連中を毛嫌いしてたのは知っている。上も上で悟の身勝手ぶりにいつもキレてたし、それを何故か俺を通して言ってくるんだからマジで意味がわからん。
けど、いつかこうなる予感はしてた。
悟にとってこの世界は少し、窮屈すぎる。
「上の連中を皆殺しにするのは簡単だ。でもそれじゃ、首がすげ替わるだけで変革は起きない。そんなやり方じゃ誰も付いて来ないしね。だから僕は、教育を選んだんだ。強く聡い仲間を育てることを。
そんなわけで、自分の任務を生徒に投げることもある。愛のムチ」
「それはサボりたいだけだろ」
「えー？ほんとだって」
「もっとマシな嘘つけよ」
「…ちぇっ。昔からノリ悪いよね、オマエ」
「別に仲良しこよししたいわけじゃねぇからな」
まぁ、でも。変わったよ、オマエ。
前よりずっと人間らしくなった。
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朝茶(プロフ) - もぶさん» ありがとうございます！そう言っていただけるとますます頑張れます！これからもよろしくお願いいたします！！ (2022年9月19日 21時) (
レス) @page20 id: 6d4df1d25a (このIDを非表示/違反報告)
もぶ(プロフ) - この作品すごい好きです！更新頑張って下さい！！ (2022年9月19日 15時) (レス) @page19 id: 38a56b994f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：無季 | 作成日時：2022年7月9日 21時
