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34:雨後 ページ34

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「Aも来てたんだ」

「当然だろ。悠仁は生徒である前に"家族"だぞ」

「…そっか」





ひんやりとした空気に包まれた薄暗い部屋。俺が高専にいた頃も何度か足を踏み入れたこの場所には、あまりいい思い出はない。

今もそうだ。俺達の目の前には、まるで事件現場の被害者のように布で覆われた悠仁の体がある。だが、その体からは胸の中心、心臓部分だけがすっぽりと抜け落ち、熱も鼓動も失われてしまった。


今朝まで眩しいくらいに輝いていた笑顔も、その生気すらももう二度とこの目に映ることはない。





「わざとでしょ」





悟の鋭い声が響く。それに気圧されたように額に汗を浮かべながら潔高は聞き返した。





「特級相手、しかも生死不明の5人救助に一年派遣はあり得ない。
悠仁は僕らが無理を通して死刑に実質無期限の猶予を与えた。それを面白くない上が、僕らのいぬ間に特級を利用して体よく彼を始末したってとこだろう。他の2人が死んでも、僕らに嫌がらせができて一石二鳥とか思ってんじゃない?」

「いや、しかし、派遣が決まった時点では本当に特級に成るとは…」





遂には全身をカタカタと震わせる。潔高も一枚噛んでるのはなんとなく察してたが、それにしたって上の潔高への信頼はたかが知れている。


とはいえ、気持ちがいいものじゃないが。





「犯人探しも面倒だ。

いっそのこと上の連中、全員殺してしまおうか」

「乗った」





あの腐った連中を一網打尽にするのはきっと気持ちがいい。





「珍しく感情的だな」

「!」

「随分とお気に入りだったんだな、彼」

「僕はいつだって生徒思いのナイスガイさ」

「うわ、キモ」

「はぁ?」





昔の悟からは考えられない言葉に思わず本音が漏れた。
弱い奴に気を遣うのは疲れるとか言ってたくせに。キモチワル。


ふと、硝子の視線が俺をとらえる。





「一体どんな心境の変化だ?」

「久しぶりの一言くらいあってもいいだろ。つか、どうせ悟が喋ってんじゃねーの?」

「10年ぶりの再会なんだ。揶揄いたくもなる」

「あっそ」

「今度飲みにでも行こう」

「ん、予定確認しとく」





硝子とは特別仲が良かったわけでもないが、飲酒喫煙仲間ではあったからそれなりに2人で過ごす時間もあって、悟に比べればよく話す方だったかもしれん。





「悟は下戸だっけ。じゃあ…潔高、オマエ来る?」

「い、いえ、私は仕事があるので…」

「了解」

「死人の前でする会話じゃないね」

「……あ」





ゴメン、悠仁。





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35:条件→←33:予感



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朝茶(プロフ) - もぶさん» ありがとうございます!そう言っていただけるとますます頑張れます!これからもよろしくお願いいたします!! (2022年9月19日 21時) (レス) @page20 id: 6d4df1d25a (このIDを非表示/違反報告)
もぶ(プロフ) - この作品すごい好きです!更新頑張って下さい!! (2022年9月19日 15時) (レス) @page19 id: 38a56b994f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:無季 | 作成日時:2022年7月9日 21時

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