向かいはクマさん (ページ10)

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ロクジュウページ10

、

朝に元気な声が聞こえてきたから
慎太郎くんは今日は早番なはず。

ってことは、昨日と同じ時間までは
いないはずだから私も早めに切り上げないと。

とは思っても早々に良い案は浮かばなくて
四苦八苦し、時間だけが過ぎていく。

「そんなに気になるならこっちに呼べば？」

『え？』

何時に終わるかわかんないまま待つなら
お前の姿見えた方がマシじゃない？

と、店長の提案で
慎太郎くんを普段は従業員以外入れない
パン屋の事務所に招くことになった。

連絡を入れるとすぐに返事が来て、

数分後、そわそわしながら
店を覗く姿が見えた。

『ごめんね、向こうの方が待ちやすいかな？』

「いや、むしろ迷惑じゃないっすか？」

「俺が提案したから気にしないで」

ヒソヒソと慎太郎くんに聞こえる声だけで何かを言い、
ポンッと肩を叩いた店長は

「俺、コーヒー買いにいくから
まあテキトーに座っててね。
お前も早く終われよー」

と言って、自販機に行ってしまった。

早く終われよって
誰だ、今週中に案をいくつかあげろって言ったのは！

と反論したい気持ちをぐっとこらえる。

「それ、新作の案？」

私のノートに気づいた彼は
私の隣に腰を下ろしてノートを覗き込んだ。