向かいはクマさん (ページ38)

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ハチジュウハチページ38

、

『慎太郎くん、ありがとうね』

自転車を押して帰る、もう
２人で通るいつもの道、になった帰り道。

彼女のお礼に

「ん？」

と聞き返すような返事をすれば

『慎太郎くんが信じてくれたこととか
その、俺の彼女って言ってくれたの

不謹慎だけど嬉しかった』

はにかむ彼女に愛しさが募る。

2人が押す、この自転車がなければ
いますが抱きしめていたに違いない。

ハンドルを握る手に力を入れて
グッと理性を保つ。

「Aちゃん、昔、店長さんのこと
好きだったんでしょ？」

『へ？なんで！？』

なんで知ってるの？
と驚く彼女に、初めて店に来た日の
お友だちの言葉が聞こえたいていた話をすると

『え、もーほんとに恥ずかしい。

…店長はただの憧れだよ。
もしかしてちょっと心配になった？』

どこか嬉しそうな彼女。

「浮気は絶対ないだろうけど

仲良いからちょっと妬いたかな」

俺が前を見て歩きながら話すと
彼女はピタッと足を止める。

それに合わせて俺も慌てて少し前で足を止めると
彼女は俺の隣までやってきて

そっと頭を俺のほうに委ねてきた。

２人とも自転車を持っているから
これ以上、どうすることもできない。

それでも、俺には十分な破壊力だった。