北家に居候する事になりました【稲荷崎】

23 ページ24

.







「治君距離を置こう」

「Aちゃんそれ言うの早ない？」






コンビニで麦茶を買い
家へと帰る道中に私はそう言った






「今まで意識してなかったから普通に顔見て話せてたけど今は無理。顔見て話せない」

「それって俺の事意識しとるから？」

「うん。リハビリというか慣れるまでトレーニングが必要だわ」

「あかんAちゃんほんまに俺の事好きなんか不安なってきたわ」

「いやそれ私のセリフ」






治君は最初嫌やと言っていたが
私が真面目にお願いすると渋々承諾してくれた









そして治君と距離を置いて4日目





「おい豚ちょっと来いや」

「やだ義兄さんなんの用ですか？」

「義兄さん呼ぶなや」





休み時間に侑君が私を呼び出した





「おい、ええ加減サムに構ってやれや」

「なんだその事か、答えは無理。いざ目の前に治君がいると緊張して逃げる自信がある」

「なんやそれ…でも俺と喋れてるやんか。俺もサムと同じ男前な顔やで」

「同じだけど全然違うわボケェ」

「なんやゴラ俺に喧嘩売っとんのか」





侑君は片手で私の頭をボールを持つ様に力強く掴んだ




「痛っ！ちょっ力強いって」

「サムはなんでこんな奴なんかと」

「…それは私も思ってるよ」






少し落ち込む私を見た侑君は
私から手を離し、頬をぽりぽりしながらこう言った




「そのぉなんや…サムはお前と話せてなくて最近ずっと落ち込んどるし、俺はちゃんと好きやと思うぞ」

「あっあの侑君が慰めてくれるなんて…私涙出そう」




泣き真似をしてると、恥ずかしくなった侑君は再び私の頭を掴んだ




「せっかく人が心配しとんのにお前はっ」

「だから痛いって！」

「ええか！今日中にでも話せよ分かったか！？」







そう言い放ち侑君は自分の教室へと戻っていった






そして次の休み時間



私は治君の教室へと足を運んでいた



チラッと教室を覗くが治君の姿は見当たらない





よしっ居ないんならしょうがないね
教室戻ろう





「Aちゃん誰かに用？」

「うわっ！…って角名君か…びっくりした」



教室を覗いていた私に気づいた角名君が話しかけてきた




「いや別にちょっと覗いただけで何の用事もないよ」

「ふーん…あっ治」

「えっ？！」




バッと後ろを振り向くが誰もいない



「おいどつくぞチベットスナギツネ」

「ごめんて。だから胸ぐら掴むのはやめて」

24→←22

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す