恋人契約【黄】

𝟐𝟒 ページ36

「それでもいいにきまってるじゃん、」

むしろ、そっちの方が嬉しいにきまってる、なんていう岩本さんの顔はなんだか感情がごっちゃまぜになってしまったような、そんな顔をしていた。

「生きててほしい、幸せになってほしい、それだけで良かったはずなのにさあ……好きって言われたら、そばにいてほしいって言われたら、そりゃ一緒に生きていきたいってさ、思うでしょ？」

その言葉が、嬉しくて嬉しくてたまらなかった。
　
「ひかる、さん」

「…なあに、Aさん」

私を呼ぶ声が、照さんの声が、愛おしい。

「好きです、すごくすごく、好きなんです」

「うん、わかってる。俺も好き」

「私の、生きる理由になってくれませんか」

私の、生きていい理由に。

「〜〜っもちろん、いいにきまってるでしょ…あー！良かった、本当に、良かったあ……Aさんの、生きる理由にしてくれるだなんて、おれ、嬉しくて泣きそー…」

顔を手で抑えて、悶えている照さん。

「……照さんのおかげですよ」

「俺の？」
　
本当に、そう。照さんとあのとき出会っていなければ。私に興味をもたなければ。お互い、相手のことを考えていなければ。

「私を、Aを、見つけてくれたのは照さんだから」

だから、私も自分を見つけられた。自分の意思で行動できるって。まだ本当は生きたいって。

あのとき、照さんに声をかけたのは、からっぽな自分を変えたかったからなのかもしれない、と今は思う。

「今度は、本当の恋人契約、ですよ」

「……俺、重いから、一生の契約になるけど？」

後悔しない？

そう問う照さんに笑ってみせた。

「後悔なんてするわけないです」


　
____私を見つけてくれたあなたはずっと大切な人で、
大好きな人だから。





𝐟𝐢𝐧
　

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