恋人契約【黄】

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𝐈𝐰𝐚𝐦𝐨𝐭𝐨 𝐬𝐢𝐝𝐞

「しごと、やめるんです」

そのときの彼女の表情が忘れられなかった。

咄嗟になんで言わないの、なんて言ってしまったけど恋人ではあるけれど、仮だし、契約だし、正直言う義務なんてないよなあ、なんて心のどこかでは思っていた。

けど、彼女は俺に心を開いてくれたような気がしたから、どこかで俺を信頼してくれて色々話してくれるんじゃないか、と期待していた。でもそんなことはなく、関係性は良好であっても彼女の奥深くまでは進めなかった。

彼女との食事が終わって帰宅し、トレーニングも終わって一息つくところでAさんについて考える。

「…お姉さんと、やっぱりなにかあったのかな」

自分は家族との仲がいいのもあってたまに話題として出すが、Aさんから家族の話について触れられることはなかった気がする。お姉さんの話が数回でたきり。なんだか彼女もふと出る話題だけで自らお姉さんの話をすることは最初の頃だけ。その後はなかった。

Aさんの自己肯定感はかなり低いし、お姉さんのことも気にされていたから、何かコンプレックス等抱えていてうまくいってないのだろうか。…というか、こういうの聞くのはさすがにまずいのだろうか。

「恋人じゃなくなるまで、あと少し、かあ」

彼女との恋人契約終了まであと少し。
自分の興味で承諾したとはいえ、こんなにも消失感がありそうなのは何故なのだろうか。

わざと考えないようにして、シャワーに向かった。

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