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𝐈𝐰𝐚𝐦𝐨𝐭𝐨𝐥𝐨 𝐬𝐢𝐝𝐞
「多分、特にないと思います」
好き嫌いがあるかと聞いたら自信満々にそう言うものだから、凄いな、えらいな、なんて思っていたけど、
「……………」
サラダをもぐもぐと食べている彼女の顔はどんより沈んでいる。特にトマトを食べている時の彼女は、ぎゅっと目を瞑りながら、苦虫を噛み潰したような顔をする。
「あのさ」
ごくん、と飲み込んでからAさんは口を開く。
「はい」
「…もしかしなくても、トマト、苦手でしょ?」
てか野菜苦手なんでしょと付け加えると、なんのことだかさっぱり?という顔をしたAさん。
「別に、普通に食べてるじゃないですか」
本当になに言ってるの?という顔をするものだから俺がおかしいのか?と思いそうになる。でもどう考えても苦手な人が無理に食べてる時の顔だったけど…もしかして、無自覚なのだろうか。
「でも凄い顔しながら食べてるから、本当は苦手で無理矢理食べてるとかない?」
Aさんは、凄い顔、ですか、と少し驚いたような顔をする。
「姉に、昔言われたことあるかもしれないです」
ふと、少し考えてAさんは言う。
「少し苦手なものとかあってもあまり噛まないで飲みこんで誤魔化したりとか、よくあって」
「うん」
「で、そしたら噛まないで飲み込むなんて危ないことしないで!って言われて」
「いざ噛んで食べたら、凄い顔してるよ、なんて笑われて………それ以降はそんなこと言ってくれる人いなかったから」
私もまだ、苦手なものあったんですね、なんて少し寂しそうな表情を見せる。
「じゃあ今日はトマト苦手記念日だ」
冗談交じりにそんなことを言ってみると、なんですかそれ、と少し笑ってくれた。
「自分のこと知るっていうのも大事なことだから今日はAさんにとって凄く良い日だと思うよ」
「知ってるようで案外知らないことばかり、なんですかね」
「確かに、そうかもね。自分のことも、もちろん家族や友達のことだってもしかしたら全然知らないのかも」
「……お姉ちゃんは、あのときどう思ってたんだろう」
また、黒く濁った目だ。
「、ねえ、Aさんのお姉さんって」
「お待たせしましたー!」
天ぷらの盛り合わせと本日の刺身でーす!なんて店員さんが声をかけてきた。
「わ、おいしそうですね、岩本さん」
「…うん、そうだね」
まあ、また聞けるか、と思い、でかけた言葉はそっとしまった。
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わたあめ?(プロフ) - 本当ですか!?💖ありがとうございます✨楽しみに待ってます☺️ (4月18日 8時) (レス) id: c3da2a518a (このIDを非表示/違反報告)
もりの(プロフ) - わたあめ?さん» コメントありがとうございます🫣💖ぜひ機会あれば書きたいと思います✊ (4月16日 12時) (レス) id: 48af4ceda7 (このIDを非表示/違反報告)
わたあめ?(プロフ) - よければなんですが、バッドエンドも見てみたいです。🥹💦 (4月16日 7時) (レス) id: c3da2a518a (このIDを非表示/違反報告)
わたあめ?(プロフ) - ヤバい…めちゃくちゃ感動しました😭✨ (4月16日 0時) (レス) @page37 id: c3da2a518a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もりの | 作成日時:2024年3月7日 14時