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今お仕事終わりました、と連絡を入れ、待ち合わせ場所である会社近くの個室のある飲食店に向かう。
すると、途中で車が急に止まり、車の窓があく。
「Aさん!なにやってんの!」
急に名前を呼ばれて驚いてまじまじと見つめると声の主は岩本さんだった。
「え、あ、岩本さん」
「あのさあ、君女の子ね?もう19時過ぎてるんだから!歩きだったら言ってよ。迎え行くから」
この前と違い、キャップ帽子にマスクという姿で顔はあまり見えないけれど声から少し怒っていることがわかる。
「……すみません」
申し訳なくなり、なんだか岩本さんの顔も見れなくて下を向きながら謝る。
「…いや、俺もちょっと言い方きつかったよね。ごめん。とりあえず乗りな?一緒に行こ」
そう言って1回降りてきてくれる岩本さん。
助手席側を開けて、どうぞ、なんて声をかけてくる。
「ありがとうございます」
「いーえ」
岩本さんが車に乗り直して運転し始めると沈黙が続く。
どう話そうか悩んでると、岩本さんが口を開いた。
「…あのね、本当に」
「は、はい」
「君は、Aさんは女の子で、仮にも俺の彼女なの。まだ仲良くはなってないかもだけど、俺も恋人として頑張りたいとは思ってるからさ。自分のこと大事にしてくれたら俺も安心する」
「…自分を、大事に、」
元々自分への関心が薄いけれど、姉が亡くなってからは尚更考えなくなった自分のこと。自分なりに自分のことは考えているつもりだけど難しいなあ、なんて考える。
「この時間は居酒屋のキャッチとか、ナンパもあるから、俺的に心配なの。Aさんもてっきり車なのかと思ってたから…確認しておけばよかったね」
「すみません、わたしも報告忘れないように気をつけます」
今度はちゃんと岩本さんの顔を見つめて言った。
岩本さんは、やっぱりかたいよAさん、営業先の接待みたい、と笑った。
岩本さんのふにゃっとした笑みに私もおもわず笑みをこぼすと岩本さんは少し驚いて、少し考えてから口を開いた。
「…やっぱり、Aさんは笑顔が素敵だね」
横目で見られながらそんなことを言われてしまったからなんだか照れてしまう。
「なんだか、照れちゃいますね」
「Aさんのこと照れさせちゃったな〜」
なんて、少しいじわるな顔して笑う。
岩本さんと出会ったばかりなのに穏やかな時間を過ごせて、もう恋人期間が終わってしまってもいいんじゃないかと満足しながら、お店までの道を2人でドライブした。
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わたあめ?(プロフ) - 本当ですか!?💖ありがとうございます✨楽しみに待ってます☺️ (4月18日 8時) (レス) id: c3da2a518a (このIDを非表示/違反報告)
もりの(プロフ) - わたあめ?さん» コメントありがとうございます🫣💖ぜひ機会あれば書きたいと思います✊ (4月16日 12時) (レス) id: 48af4ceda7 (このIDを非表示/違反報告)
わたあめ?(プロフ) - よければなんですが、バッドエンドも見てみたいです。🥹💦 (4月16日 7時) (レス) id: c3da2a518a (このIDを非表示/違反報告)
わたあめ?(プロフ) - ヤバい…めちゃくちゃ感動しました😭✨ (4月16日 0時) (レス) @page37 id: c3da2a518a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もりの | 作成日時:2024年3月7日 14時