episode10 ページ10
犯人の連行を見届けそれに続くように学生たちを外に連れ出す。みんなは抱き合うようにして集まっていた
いくら悪い事をしたとはいえ、怖かっただろうな。まだ学生なんだ、これから正しい道に戻れるといいけど
それから私は騒がしい2人のところに戻った
「二人とも、ほらタオル!風邪ひくよ」
「Aちゃん!めっちゃ寒い、!やばい!」
ぎゃんと吠える伊吹さんの頭にタオルをかける。どういうわけか「拭いてよ〜!」と騒いでいる
なんだか濡れた捨て犬のように見えてきて少しだけわしゃわしゃとしてあげれば嬉しそうにくしゃりと笑う
「自分で拭け!バカ」
「あ、志摩ちゃんも拭いて欲しいって」
「そうなんですか?気付きませんでした」
軽く笑いながらはぁ?と動きをとめた志摩さんの頭に手を伸ばす。思ったよりも高いところにあって、ふわふわだ。と呟けば恨みがましそうに見下ろされた
ちょっと可愛い。言ったら文句言われそうだけど
「あ、志摩ちゃんウフってる」
「うふ?」
「こいつの言うことは気にしなくていい、基本馬鹿なことしか言わないからな」
そう言う志摩さんの耳が赤くなっている気がして
「やっぱり、冷えてるみたいですね」
と耳に手を伸ばし触れればびくっと志摩さんの肩が飛び上がる。それから目を白黒させて私を見つめて
「バッカ!!!!」
と一際大きい声で顔を背けられてしまった。そのまま振り返って後ろの刑事さんと話し始めた
「ばか、って言われちゃった」
「あーあ、Aちゃん気にしなくていいよ。うん、志摩ちゃんちょっとびっくりしちゃっただけだから」
隣の伊吹さんが私に向かってにこやかにそう言う。黙ってれば絶対モテるのに。と思った
志摩ちゃんは照れ屋さんと何度か繰り返してから伊吹さんも志摩さんの隣に戻っていく
一人になった私は自分の手を見下ろした
誰かに触るのが嫌じゃなかった
抵抗を感じていたはずなのに2人に触れるのは嫌じゃなかった
「んー、なんでだろ」
そう呟いた声はパトカーのサイレン音にかき消されて消えた
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作者名:あぶく | 作成日時:2024年3月27日 7時