愛を知らないふたり【イデア】 (ページ8)

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07.恋愛感情ページ8

「イデア、オルトおやすみ」

「おやすみなさいAさん」

Aはイデアとオルトに挨拶して部屋に帰っていった。

オルトはイデアとAが恋人関係にあることを知る唯一の存在である。

「兄さんはなんで秘密を守る条件として恋人になることを提示したの？」

「それはつい魔が差してしまったというか」

彼女は女であることを知られたくない、僕と付き合ってくれるならその秘密は誰にも明かさない。
表面上は利害関係が一致したことになっている。

「恋愛感情を持たない相手に対して、気持ちを弄ぶ行為は一般的に良しとはされていない。
もし兄さんがAさんのことを好きではないのに交際関係を続けているのだとしたら推奨できない行動だな」

「まず大前提として彼女は僕のことを好きじゃない。オルトの言う気持ちを弄ぶ行為ってのは、相手が自分のことが好きというのが前提の話のはず。だから僕たちにはあてはまはない。それにそもそも僕のことを好きになる人なんているわけないでしょ」

「もう兄さんはすぐそうやって卑屈になるだから。兄さんのことを好きになる人は必ずいるよ！現に僕は兄さんのことが好きなんだから」

「じゃあさ兄さんにもうひとつ質問」

「兄さんはAさんのことが好き？」

「わからない」

「聞き方を変えるね。Aさんが他の人と交際することになったら兄さんは嫌だとは思う？」

彼女と付き合うことになったのは僕がたまたま彼女の秘密を知ったところからだ。

もしその秘密を知ったのが別の人物だったとしたら
そいつが僕と同じように秘密を明かさないかわりに付き合うことを条件として提示したら
彼女は別の人と付き合っていたのだろうか
そりゃあ女なのに男のフリして学園に通ってるっていう秘密を隠してほしかっただけなのだから当たり前か
彼女は僕と付き合いたかったのではなく、あくまで秘密を守ってほしかっただけ

もしも僕が彼女の秘密を知らないままだったらべつになんとも思っていなかった。それは知らないからあたりまえのことだ。
だけど全ては仮定の話。僕はもう知ってしまった。彼女が女の子であることを。
今から忘れることなんて、僕にレテの河を使わない限り無理な話。

もしAが他の人と付き合うことになったら…

「嫌だって兄さんが思うなら、それはAさんに特別な感情を抱いている、好意を持っているという確かな証拠だよ」

嫌だ。

そう思うのはオルトの言う通り、A氏の事を好きだからなのかな。