22 ページ50
彼は麻生圭二を慕い、時々ピアノの調律をして、手入れをしていたらしい…………
平田さんは拘束された時麻薬を隠しもっていたこと、家宅捜査で大量の麻薬が押収され、逮捕され事情聴取を受けている。
成実先生は煙を大量に吸い込んでしまったが応急処置がされてそのまま逮捕された。本土に連行される時の彼はどこか吹っ切れた顔をしていたようだった――――
私たちも本土に戻るため船に乗り込む。昨日大号泣したため、目が腫れぼったいが気にしない。
ユイさんも本土に戻るため一緒の船に乗船する。私は気になっていたことを聞いた
「そういえば、ユイさん。なんで月影島にいたの?」
「ああ。あそこで麻薬の取引があるって噂があってね。真実を確かめるために取材しようとしてたんだ」
「そうだったんだ……ユイさん、今回のことも記事にするの?」
「……ああ。書くよ。でもちゃんと12年前の真実も書くつもりだよ」
「そっか……」
水平線をぼんやりと見つめていたが、チラッと松田さん、萩原さんを見る。2人は顔や手に怪我をしていたので包帯をしている。私の様子に気づいたユイさんはそっと私の背中を押す。
「…………松田さん、萩原さん」
意を決して2人に話しかける。口を開く前に頭を下げる。
「昨日はごめんなさい。気が動転してて変なこと言っちゃった。本当はお礼が言いたかったの。今回一緒に島に来てくれて……事件解決してくれて……成実先生助けてくれて……ありがとう!」
顔をあげて2人をみるがキョトンとしていた。あれ?
「へえー。A、俺らに礼があるわけだ。まー今回は色々と大変だったからな。ありがとうだけじゃなあ」
「うっ。なに?私、お小遣い少ないから高いの買えないよ……」
「バーカ。ガキにたかる気はねーよ。礼は――」
「陣平ちゃんはね、Aちゃんに名前で呼んで欲しいんだよ」
「テメッハギ!」
松田さんが顔を真っ赤にして萩原さんに怒っている。
え?名前?
「名前って、じんぺーさん?」
じんぺーさん呼びしたらムズムズした照れたような顔をしている隣で萩原さんが俺も!名前!とうるさい。
「分かりました!研二さん!これでいい?」
2人とも嬉しそうに笑ってる。後で研二さんにこっそり聞いたら私がユイさんのことを名前で呼んでるのが気に食わなかったらしい……。子供なんだから……
私たちの笑い声を風に乗せて船は本土に向かう――――
288人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:久春 | 作成日時:2023年11月23日 12時