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清水さんはううむと頷く。それをみて、
「つまり、犯行当時公民館に誰かが来たことにあせって逃げたって考えた方が自然なんだよ」
今度は伊達さんが話し始める。
「成実先生、あんたは第一の事件でテープ頭に空白を作った曲を流した。だから俺らは第二事件も同じだと錯覚した。しかし、これは自分で検死する状況を作り出さないと意味がない。だから川島さんを溺死させた。変死であれば必ず司法解剖をするため、本土に持ち帰らせるためにな。そしてあんたはまんまと黒岩村長の検死役になり、トリックを実行したわけだ」
「だ、だが……なぜ、彼女が……そんな……」
「……成実医師が三つの事件を起こした理由は12年前に遡るんです」
最後にユイさんが静かに話す。
「12年前、麻生圭二が焼身自死に見せかけて殺された事件……今回殺された川島さん、黒岩さん、西本さん、2年前に亡くなった亀山さんの4人にね!」
「え!?」
思わず声が出た。成実先生の力が少し緩んだように感じる。事件の核心に迫っているんだろう。
「麻生さんはね、海外公演を利用して麻薬を買いつけて売り捌いていたんだ。あの暗号とピアノを利用してね……」
商売は順調だったんだろう。しかし――――
「麻生さんは協力しないと言い出した。秘密が漏れることを心配した4人は彼と彼の家族を家に閉じ込めて焼き殺したんだ……」
「き、きみはなんでそれを…………」
「……焼け跡から見つけた楽譜に書いてあったんですよ。麻生さんが死ぬ直前に息子宛に書いた手紙。我が息子セイジへって……」
「セイジ……まさか……」
「そう。
「なーんだ。そこまでバレちゃったんだ……もうおしまいか。Aちゃん、 」
「え?」
私は成実先生に突き飛ばされて松田さんたちに向かって倒れ込む。
「わっ!」
「「A!(ちゃん)!」」
突き飛ばされて倒れ込む私。成実先生はその隙に逃げてしまったようだ。伊達さんは部下に成実先生を追うように檄を飛ばす。
「松田さん!萩原さん!成実先生を助けて!あの人死んじゃうよ!!」
私の言葉に顔を見合わせて2人は村役場から飛び出す。私も2人の後を追って走り出す。ユイさんの声をBGMにして――――――――
公民館は燃えていた。ゴーゴーと火の手はすでに館全体に及んでいる。
「陣平ちゃん」「ハギ」
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作者名:久春 | 作成日時:2023年11月23日 12時