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その時、
「痛っ」
私は急に左腕を後ろにねじり上げられた。首元には小さなナイフが突きつけられる。いきなりの展開に頭がついていかない。だって後ろにいる人は――成実先生。
「Aちゃん!!」
ユイさんの悲痛な叫びが聞こえる。大丈夫と笑いかけたいが腕が痛くて顔がしかめちゃう。
「浅井先生……これはいったい……」
清水さんはこの状況が飲み込めていないのかアタフタしている。
「おい、あんた。自分がなにしてんのか分かってんのか」
松田さんのドスの聞いた声に成実先生は口を開く。
「全部……全部、わかったんだろ?
その言葉に息を飲む。成実先生が犯人?俺?
「ど、どういうことだ。なぜ浅井先生が?平田では無いのか?」
清水さんの疑問に松田さんが口火を切る。
「おかしいと感じたのは第二事件現場だ。黒岩村長が亡くなって、彼の死亡推定時刻にかかっていたテープが5分30秒しか空白がなかった。だから発見直前に殺されたと考えられたが……Aが床の譜面を踏んづけた時、暗号はそのままだった……」
「た、たしかにそうだ……」
「常温だと人間の血は乾くまで15分から30分でかかる。おかしいよな。村長は数分前に亡くなったはずなのに……つまり、偽りの死亡推定時刻だったんだよ!」
「偽りの死亡推定時刻!?だが、カセットテープの空白は…………」
「リバースだよ。曲の入ってねー面からテープを流して時間を30分稼いだんだ!」
「あら?ならどうしてあの現場でリバースされているか気がつかなかったの?」
成実先生が疑問をぶつける。それに答えたのは、萩原さんだ。
「それはねー。コレ!」
萩原さんは2枚の写真を私たちに見せる。
「成実せんせーは、俺たちに気づかれないようにパネルに被せるように村長を置いたんだ。でも、この写真では村長の首元光ってるけど、こっちの写真は――」
村長をどかした写真にはランプが消えている。つまり、誰かがボタンを解除した。そしてそれができたのは警察以外に遺体に近づけた…………成実先生だけ。
「それに第三の事件なんだけど確かに平田もあやしいが、現場の位置的におかしいんだよ。俺たちが公民館に着いた時入口は開いていたが、倉庫のドアは閉まっていたんだ。つまり、犯人は窓から侵入して、西本さんを殺してまた窓から出たってわけ。それに犯人は西本さんを自ら命をたったように見せかけたのに踏み台が無かった初歩的なミスをしているんだよ」
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作者名:久春 | 作成日時:2023年11月23日 12時