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「見つけた!ようやく見つけたぞ!」
駐在さんが両手に大きな封筒を掲げている。
「おじーさん!ごめん。ちょっと……」
ユイさんは駐在さんから封筒を奪い取って楽譜を確認する。ユイさんは楽譜を見ながらブツブツと呟いている。おそらく暗号解読をしているんだろう……。
思案顔のユイさんが静かに駐在さんに尋ねる。
「おじーさん、麻生圭二に息子はいたんですか?」
「ああ……そういえば……麻生さんには、娘の他に息子もおったのー……」
「え?」
思ってもない言葉に驚く。
「小さい頃に大病を患って、病院に入院しとったぞ。たしか名前はー……」
「セイジ」
「セイジ?それが麻生さんの息子の名前なの?」
「ああ、そうだよ。Aちゃん。俺たちも村役場に行こう……」
「うん!」
――――――――――――
村役場に戻ると時刻は午前3時。長い長い夜ももうすぐ明けようとしている。伊達さんが今までの状況をみんなに説明している。
令子さんは村沢さんに付き添っているようでここにいない。
伊達さんは松田さんとユイさん、萩原さんと話し合っているみたい。
除け者にされた私は廊下のソファで成実先生と仲良く座って待つ。成実先生は思い詰めた顔をしている。
「成実先生……大丈夫です?なんか顔色悪そう……」
「え?ああ。ごめん。なんか検死ばっかりだったから……気が滅入っちゃったのかな……」
「そうですよね。成実先生、お医者さんだもん。人を助けるのがお仕事なのに……でも、大丈夫ですよ!きっと伊達さんたちがすぐに解決してくれますって!!」
ふふふと笑って話す私はその時、成実先生の沈んだ悲しい目をしているとは全く知らなかった――――
伊達さんたちの話し合いが終わったようで、こちらに向かってくる。
「みなさん、おつかれのところ恐縮ですが、事情聴取をはじめます。まずは――――」
伊達さんはぐるりと見回して、
「成実先生。よろしいですか?」
「え?私からですか……?」
「伊達さん!なんで成実先生からなの?平田さんは?」
伊達さんは私を無視して、成実先生……とりあえずこちらにと成実先生を別室に連れて行こうとする。その様子がただ事じゃない気がして周りもピリピリした空気になる。
成実先生は顔色が青ざめている。
「な、成実先生……?」
「おい、あんた――――」
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作者名:久春 | 作成日時:2023年11月23日 12時