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テープを再生すると『月光』の第三楽章が流れる。その中でも駐在さんとユイさんが倉庫の中で楽譜を探しているが見つからない。
「……なあ班長」
「ああ。なーんか、納得できねーよな」
松田さんも伊達さんも不満顔。
「納得できないって……自死なんじゃないの？」
「いや、見ろよ。ここには踏み台がねーのにどーやって首吊りすんだ？おい、A……オメーまさか踏み台どこかやったんじゃないか」
むむ。
「そんなわけないでしょ！新一くんにちゃんと教わっているもん！事件現場の保存は基本中の基本でしょ？バカにしないでよ！」
濡れ衣だ！
「まあ、ハギも一緒だったらそれは無いか。それにわざわざテメーの遺書を暗号で書くのはおかしくねーか。それに……」
濡れ衣きせたのに飄々としている姿にむっとするが、本人はカセットテープレコーダーをいじっている。
「松田さん、それ証拠品だよ？分解しちゃダメなんだからね！」
「おー……」
聞いてるのか聞いてないのか生返事している。もう！
「松田さんってば、前に飲み会で私の家にあったラジカセを分解してすぐ組み直したけど、あれからリピート機能効かなくなっちゃったの忘れたの！？あのラジカセ、結構お気に入りだったのに！」
「！！」
松田さんはハッとした顔をして、
「悪りい班長！ここは任せた！A！」
「？」
いきなり子犬を可愛がるように私の頭をぐしゃぐしゃにする。やーめーてー！
「よくやった！！」
その一言を残して風のように走っていった……え？いったいなに？そしてこの惨状(私の髪)はどーすんのよ！
ボサボサになった頭を整えて戻ると、伊達さんはピアノの部屋にいた。
令子さんは村沢さんに付き添っている。
村沢さんは手当てがされたようで額に包帯を巻いている。
「萩原、村沢さんの具合はどうだ？」
「おっ、班長。手当ては成実先生に手伝ってもらったよ。ただ、頭の怪我だからねー……」
「ええ。脳震盪のようですが、意識が戻らないので診療所できちんと診察しないと……」
「周一……。平田よ！平田が犯人なんでしょ！平田がパパを殺して、周一まで！さっさと逮捕しなさいよ！」
「まあまあ。平田さんは傷害の容疑者ですが、コロシまでは…………」
伊達さんが令子さんをなだめながら、部下に村沢さんを診療所に連れていくことと、村役場で事情聴取のやり直しを指示し、みんなを連れて外に出ていく。私は、ユイさんと駐在さんに声をかけようと倉庫を覗くと――――
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作者名：久春 | 作成日時：2023年11月23日 12時
