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そこまで話して令子さんから異議が出る。娘なのに父親殺しの容疑者になるのはおかしい。そもそも犯行時間帯はずっと取り調べ受けていたと主張する。
「な、なら成実先生だって容疑者から外れますよ!だってずっと私と一緒にいたもん!」
私の話を皮切りに次々と容疑者候補の人たちから身の潔白をさけんで、あちらこちらで口論になっている。その中でも西本さんはブルブル震えて何かに怯えている様子……。伊達さんは「みなさん、落ち着いてください。とにかく――――」
“わかっているな。次はおまえの番だ”
それまで考え事していたユイさんの声が室内に響く。
「ユ、ユイさん?」
「ああ。ごめんごめん。この譜面の暗号がようやく解けたんだ。ピアノの鍵盤を左から順にアルファベットで当てはめて、メッセージに当てはまる音を譜面に書くんだよ」
「おい、緑川……。じゃあさっきの血の譜面は?」
「さっきのは――」
“業火の怨念ここにはらせり”
それを聞いた西本さんは「ハハ……ハハハ……」と力なく笑い、
「ハハ……アイツだ…………麻生圭二は生きてたんだあー!!!」
西本さんは恐怖が頂点に達したのか喚き散らしている。
「麻生さんは生きとらんよ!12年前に亡くなったんじゃ」
「駐在さん……」
駐在さんのいきなりの登場にびっくりして話しかけた。そういえばいなかったな、この人。
「なあ、じいさん。麻生さんが亡くなったのは事実なんだよな?」
伊達さんは腕を組みアゴに手を乗せている。
「そうじゃよ。焼け跡から骨が見つかったんじゃ。奥さんと娘さんも一緒にな……。歯形も後で調べて一致したと聞いたわい」
「なら間違いないな……」
「すべて焼けてしまって……残ったのは耐火金庫に入っていた楽譜だけじゃわい」
「「「楽譜!?」」」
新事実に室内は色めきたつ。
金庫にある楽譜は公民館の倉庫にあるが、倉庫のカギは派出所にあるらしい。駐在さんはカギを取りに走って行ってしまったが、1人では探すのも一苦労だ。
「私、駐在さん手伝ってくる!」
「Aちゃん!俺も行くよ。その楽譜、もしかしたら暗号になってるかもしれないからね」
「うん!」
私とユイさんは駐在さんの後を急いで追う――――
派出所に向かう道の途中で駐在さんに合流した。ユイさんは麻生さんのことや村民についてアレコレ聞いている。
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作者名:久春 | 作成日時:2023年11月23日 12時