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みんなが呆気にとられていたが、伊達さんは素早く動く。令子さんが、村長に近づくのを阻止すると、すぐに鑑識と検死官を呼ぶよう部下に叫ぶ。
「鑑識はいますが、検死官は川島氏解剖のためすでに東京に…………」
「そうか……こんな時に…………」
「あの、私でよければ……」と成実先生が挙手する。
「そうですね。すんません。成実先生……ご協力頂けますか」
「はい……もちろんです」
成実先生は緊張した顔で腕まくりをしている。
ダァン――
松田さんが壁を殴っている。その拳は怒りでふるえている。
「ふざけやがって俺の目の前で2人も……ぜってー犯人捕まえてやる!」
「陣平ちゃん…………」
「Aちゃん?大丈夫?」
ユイさんが私の顔色がよくないことに気づいた様子で声をかけてくれた。「うん!平気」と頷いて笑顔をむけ、現場の鑑識状況をじっと見つめる。
鑑識さんが到着後、成実先生による検死が開始され、
「――――以上のことから、被害者の黒岩さんは亡くなってから数分たっていると考えられます」
「数分っスか」
伊達さんは腕組みしながら考えるポーズをする。
「班長ー!成実せんせの言う通りみたいよ?このテープ、頭に5分30秒空白あるみたい……」
萩原さんが一本のカセットテープを手にしている。
「警部!被害者の座っていた椅子の下に妙なものが……」
鑑識さんが、伊達さんに呼びかけるとみんなが走り寄るとそこには血で書かれた譜面があった――――――
「これも、ダイイングメッセージなの?」
なるべく遺体に視線を向けないように床の譜面に視線を集中する。
「Aちゃん、それはないんじゃない?」
私の推理はすかさず萩原さんに一刀両断された…………
「確かにな。こんなものを書く余裕があれば助けを呼ぶはずだ。だが誰も悲鳴や物音を聞いてねぇ。そうなると犯人がわざと残したことになる……」
伊達さんの容赦ない追撃もあり、なるほど納得……。
そんな時――
「おいA、お前はあっちで待っていろ」
テープレコーダーやパネルを確認していた松田さんに現場から追い出される。素直に「はーい」と返事をして歩き出そうとしたら、よく見ずに鑑識さんにぶつかってその拍子にバランスを崩して…………譜面のうえに倒れそうに…………
「わっ」
「ばっ」
すんでのところで松田さんに抱き止められる。ふー危ない危ない。
「………………Aちゃん……譜面、踏んでる…………」
「え?」
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作者名:久春 | 作成日時:2023年11月23日 12時