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「バッカモン!!何が呪いのピアノだ!!」
平田さんに向かって怒鳴っている声の主は村長の黒岩さんだった。平田さんも額に汗を浮かべながらとりなそうとしているが、村長は「あのピアノを今週中に処分しておけ!!」と平田さんに吐き捨てて役場を出ていってしまった。
「ちょっと、いい加減にしてよ!!私に川島さんを殺す動機なんてあるわけないじゃない!!!」
松田さんが仕事に戻り、今度は令子さんが事情聴取に入ってから10分ぐらいたつが廊下にまで怒鳴り声が聞こえている。
「令子さん、すごいですね。事情聴取に入ってからずっと怒鳴りっぱなしですよ……」
「ホント……」
成実先生と廊下で待っているが、私にはもう一つ気になることがある……西本さんだ。事情聴取が終わっているのにまだ廊下におり、しきりに腕時計を見て時間を気にしている様子だ。(誰かと約束でもしてるのかな?それにしては挙動がおかしい……)
西本さんが急に歩き出して、廊下から見えなくなった。好奇心に負けて成実さんに「私、お手洗い行ってきますね」と声をかけて西本さんの後を追う。
廊下の先にはトイレがあり、村沢さんはちょうど男子トイレから出てきたようだ。
「あの村沢さん!すみません、西本さんみませんでしたか?」
「さあ?みなかったが…………」
そんな時、昨日とは違うピアノのメロディがスピーカーから聞こえてきた。
(これ、『月光』の第二楽章……!)
事情聴取中、暇すぎて『月光』について曲を聴いたり調べたりしていた甲斐があった!じゃなくて、これが流れたってことは…………
階段の先に「放送室」がある。階段を駆け上がってみると半開きになったドアがあり、近寄ろうとしたら部屋から男が後ずさりで出てくる。西本さんだ。だが彼の表情は恐怖で強張っているようだ。
「西本さん……どうし――」
西本さんに声をかけようと近づいたら、後ろからバタバタと松田さんたちも階段を上がってきた。私と西本さんを一瞥して「放送室」に入って行く。私も「放送室」を覗くと、
椅子に座ったまま、背中に包丁が突き刺さって亡くなっている、黒岩村長がいた――――――――
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作者名:久春 | 作成日時:2023年11月23日 12時