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しかし、それからお母さんとお父さんの状態は悪化していく一方だった。
夜中、喉が渇き、リビングに水を飲みに降りると、中からお母さんたちの怒鳴り声が廊下まで響いていた。
「残業なんて嘘なんでしょ!!」
「はぁ、嘘なわけないだろ。お前らのために働いてるのになんだその言い草は」
「いつも帰ってくるとあなたから女の人の香りがしてんのよ!私がなんも気づいてないと思ってたの?!」
「そんなの同僚の匂いがちょっと移っただけだろ。別にやましいことなんかしてない」
「じゃあこのメールのやりとりはなのかしら?」
「は、おまっ、何人の携帯勝手に見てんだよ!!」
「(お父さん、本当に不倫してたんだ…)」
これ以上聞いていられなくなり、あたしは静かに部屋に戻った。
運命で結ばれているはずの二人がどうしてあんな風になってしまったんだろう。
これからあたしたち家族はどうなってしまうんだろう。
1時間ほど経ってからあたしは再びリビングへ行ってみた。
先ほどみたいに怒鳴り声は聞こえない。
そっと扉をあけ、リビングに入る。
「ッ、ヒック、……ッ、ヴッ、っ、…」
「お母さん…」
お母さんがリビングの端で声を殺しながら泣いていた。
お母さんの元へ近寄るも、どうすることもできず、泣いているお母さんをそっと抱きしめた。
いつもお母さんは笑顔で、明るくて、優しい。そんなお母さんがこんな風に壊れていく姿をあたしは見たくない。
なにより、そうさせたお父さんが許せない。
「Aっ、…アアアッ、ッ、…」
お母さんは泣きながら、あたしの肩に顔を埋めた。
こんなときなんて声をかけてあげたら良いのかがわからない。娘なのに情けない。
少ししてお母さんの様子が少し落ち着いてきた。
「、ごめんね、A…」
「あたしは大丈夫だよ」
「あの、こんなことAに、言うのは、すごく申し訳ないんだけど、実は、あの、っ、…おと、…おとうっ、…ッ、」
お父さんが不倫していたことを伝えようとしているのだろう。お母さんはまた再び泣き始めてしまった。
「お母さん、」
このままでは、お母さんが壊れてしまうかもしれない。
「あたしと一緒に二人で暮らさない?」
あたしたちは、もう"あの人"と一緒にいるべきではない。
お母さんの赤い糸はもういつ切れてもおかしくないほどにボロボロになっていた。
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たぬき(プロフ) - ちょいちょい出てくるコメディ感が、the宮治みたいな感じですごく好きです!楽しく拝見させて頂きました。 (2019年9月29日 19時) (レス) id: cf33a90161 (このIDを非表示/違反報告)
もらん(プロフ) - 黒髪さん» 好きと言ってもらえてとても嬉しいです!更新頑張ります!(*´-`) (2019年9月10日 0時) (レス) id: 3669949a26 (このIDを非表示/違反報告)
もらん(プロフ) - ねうさぎさん» 治くんいいですよね(*^^*)亀更新にはなりますが更新頑張ります! (2019年9月10日 0時) (レス) id: 3669949a26 (このIDを非表示/違反報告)
黒髪(プロフ) - この作品とても好きです……更新頑張ってください! (2019年8月15日 16時) (レス) id: 058440bffe (このIDを非表示/違反報告)
ねうさぎ(プロフ) - 治くん好きです…ありがとうございます…更新頑張ってください! (2019年8月15日 13時) (レス) id: 73373523e6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もらん | 作成日時:2019年8月9日 16時