三十五話『人喰い鬼と鬼狩り様』�� ページ35
.
生き残った仲間達に未来を託し、今から自分が死ぬ恐怖の中で先に散っていった者達の思いの深さはどれほどのものでしょうか。
私のこの拙い文では、どのような戦いだったかなど伝わるはずもありません。実際私も全容を知ることなど出来ないのです。私はただ、要所要所を鎹烏から聞いただけなのですから。その悲惨さは、計り知れません。
これを書いているのは、決戦から3ヶ月経った春の温かい日です。
先日鬼殺隊は、最後の柱合会議をもって解散となりました。少し寂しいけれど、平和になったこの世界で「鬼殺」を掲げた組織など必要ありません。
生き残った隊士や関係者達は、生まれ故郷に帰ったり、旅に出たりとさまざま。
....私にも、帰る場所はあります。還るべき場所。
先程、久しぶりに桜の木に行きました。骨も残らず消えた愛する彼に、お墓は存在しません。だけどあの場所にいる気がしたから、全てが終わったと伝えに行きました。
涙は、溢れだしたら止まりませんでした。泣いたのなんていつぶりだったか。思えば私は彼が死んでから一度も泣いたことがなかったのです。
特に我慢していたつもりはなかったけれど、まるで今まで溜めていたものが全て溢れてしまったかのようでした。
いつの間にかそばに来ていた風柱様に話しかけられても、涙が止まることはありません。会話の中で思わず頬を叩いてしまう様なこともあったけれど、涙については触れずにいてくれました。
実は、思い出してしまって今も涙が流れています。私って、こんなに泣き虫だったでしょうか。
いいえ...これはまた違った意味の涙でしょうね。
そもそも私がこの文を描き始めたのも、ただの思いつきなんかではありません。
瞬間的な、衝動のようなものです。
というのも、自分で「その時」が近いと薄々感じていたから。
案外早かった。まだもう少し先になると思っていた。彼が迎えに来てくれたのでしょうか。私が今日会いに行ったから、待ちくたびれてしまったのかも。
結局私は、仲間達に自分の身体のことを言えませんでした。そんな余裕はなかったし、何より生命を削って戦っている彼らの邪魔をしたくはなかったのです。そして鬼がいなくなった今も、余計な心配事を増やして欲しくありません。
だから私は静かに退くことにします。そして私が生きた人生を、心情を、最後の力を振り絞ってここに綴ります。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 570人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
華夏(プロフ) - この作品好きです!これからも更新頑張ってください! (2021年11月3日 16時) (
レス) id: 4bbf064d28 (このIDを非表示/違反報告)
ﾓﾍﾟﾍﾟ(プロフ) - 晴華さん» すみません、非表示でした汗 ご指摘ありがとうございます (2021年11月2日 12時) (レス) id: 9dfe7a6e7a (このIDを非表示/違反報告)
晴華 - 三十六話はどうしたんですか？ (2021年11月2日 9時) (レス) id: 9ac8204341 (このIDを非表示/違反報告)
あさみ(プロフ) - 面白すぎて大好きです！これからも頑張ってください！ (2021年10月31日 22時) (レス) @page42 id: 2e88d3e072 (このIDを非表示/違反報告)
mmiho(プロフ) - 面白くて大好きな作品です！ (2021年10月31日 21時) (レス) @page42 id: 2243970d57 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ﾓﾍﾟﾍﾟ
| 作成日時：2021年5月29日 8時
