【メンズ校】Amour à l’infini【男主】 (ページ10)

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自然体のまま歩みを止めずにゴミ箱へ落ちていく本を掴む。

音がしないからと振り返った2人組と目が合うが、舌打ちをしてそのまま去ろうとする。
自分より強いと思った相手には手を出せない弱者の思考。

『落としましたけど？』
「知らねえよ！」

負け犬の遠吠え。
人助けなんてする自分もどうかしてる。やっぱり野上に感化されているに違いない。

　

あれ？と本がないことに気付いた男に近付くと、そいつは俺を見上げた。

「宣杜くん…？」
『これ、お前のだろ』
「わあ…！ありがとう！」

本を差し出すと笑顔で受け取るそいつは、他者に本が捨てられかけていたことも気付いていただろう。振り返ったときに2人組の後姿を視界に捉えていたから。

花井衛という男子生徒は俺と似たような性質を持っている。
同じじゃあない、似てるだけ。

本人は隠してるみたいだけど、匂いでわかる。同族的感覚があった。
隠すことは罪じゃない。俺だって隠してるし、人のことは言えない。

だから俺が歩み寄ることはないし、ただただ顔見知りなだけ。
向こうも俺のことはただの生徒としか思ってないだろうし。

　

用が済んだからその場から離れようとすると、視界に野上が入る。
野上に気付かないなんて失態だ。まだ寝ぼけてたのか？

改めてお礼を言われている声がするが、振り返ることなく野上のほうへ歩いた。

　

野上「お前も人の心を持ち合わせていたんだな」
『野上は俺のことをUMAか何かかと思ってるの？』
野上「そうじゃない。宣杜は俺以外に興味ないと思ってたから」
牧「えっ…何その発言」
『あれ？牧主税いたの？』
野上「牧…まだいたのか」

本当にいたことに気付かなかった。
ごめんな牧主税…野上しか視界に入れてなかったよ。

にしても野上って、俺が野上にしか興味ないこと声に出しちゃうんだ。
それってどんな感情で言ってるんだろ、聞いたら怒られるかな。