【メンズ校】Amour à l’infini【男主】 (ページ8)

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野上の部屋の扉をノックすると、淡々と返事が聞こえてくる。
静かに開くと何やら作業してるみたいでこっちには目もくれない。

ゆっくり近付いて後ろから抱きしめる。
野上の肩がびくっと震えるが、無視するのが悪い。

『俺が来たのに無視なんて酷いな』
「俺の邪魔をしているとは考えないのか」
『別に俺はその作業がなくなっても損しないもの』

腕を振りほどかれるので大人しく離れる。
そうするとようやく野上が俺に体を向けた。こっちを見てくれたのは素直に嬉しい。

『面白いことしてるね』
「何しにきた」
『差し入れ』

ブラックコーヒーと蛍光ペンを見せると、色々察した野上は何も言わずに受け取る。
触れた指が熱かったのは黙っておこう。

「牧に会ったのか」
『そう。その時に野上がそれ欲しがってるって話もされた』

俺が要因だから他の奴の名前を出されても大人しく答える。
聞かなくても理解しただろうに、どうしてわざわざ聞くのかはわからないけど。

「それだけか？」
『え？』
「牧と、何話したんだ」

それ野上に関係なくない？という言葉は飲み込んだ。

俺の思い違いじゃなければの仮定。
野上は俺と牧主税が話した内容に興味があるわけじゃなく、自分の知らないところで俺が何をしてたかが気になってるんじゃないか…？

これで牧主税に気があってそうしたのならこの場で首絞めちゃいそうだけど。

最近の野上は俺に気があるみたいな反応をして俺を勘違いさせようとするから、あながち間違いじゃない気もする。

経験上、そういう人間の変化には目敏いんだ。だから野上の感情の変化にも気付いてしまう。
鈍いほうが今は幸せだったけど、周りの目を気にして生きるしかなかったのだから仕方がない。

『野上はそれを聞いて満足するの？』
「っ…話せないこと話してたんなら、言わなくていい」

拗ねるように俺に背を向けて作業に戻るから、ニヤける顔を隠さずに野上のベッドに座り込む。

どうしよう、野上…本当に俺に気があるかもしれない。
この気がある、は人間的興味のほうだ。

野上はどう見てもヘテロセクシュアルだから恋愛沙汰にはならない。
そこは出会った時から既に諦め捨てている希望。

だが野上がようやく俺に興味を持ってくれた。嬉しい。
少なくともこの学校の中で一番のお気に入りになれてしまったのではなかろうか。

　

…牧主税はわからないけど。

　

野上の匂いのする枕に顔を埋めながら、この幸福を堪能するのに目を閉じた。