【メンズ校】Amour à l’infini【男主】 (ページ49)

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寮に戻るとやけに漂う香りがして、神木の姉が来ていたことを思い出す。
前に牧主税も似たようなものを持ち帰っていた、この島にも異性は存在するらしい。

野上の纏っていたものが一番強い刺激だったのは、俺が野上のことを好いているからだ。
俺は別に女が嫌いなんじゃない、普通でないことを実感するのが嫌なだけ。

自分を傷つけないことに、必死なだけだ。

海から戻れば息苦しさは戻ってくる。
神木のことが解決するまでは部屋にいるのが安全だと思って欠食届をもらって部屋に戻った。

…ついに限界がきてたのか、野上の匂いがして、目を閉じればすぐに意識は落ちていった。

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部屋の扉を叩く音がして目が覚める。
扉を開ければそこにはストーカーがいて、目を丸くする。

すると用件も言わずに俺の腕を引っ張り走りだす、意外と強い力にびっくりした。

『え、何？どうした？』
「いいから！」

連れてこられたのは建物の外。
窓から野上たちが見え、足が止まる。

『なんで』
「…あいつ、さっき部屋にいた」
『え』

壁に背を預け、ずるずると座り込む。
ストーカーもまた同じように隣にしゃがみ込んだ。

『なんでそんなこと知ってるの』
「…見てたから」
『なんで』
「あんたが変だったから、なんとなく」

ごもごもとしたまま、挙動不審に俺を見たり見なかったり。
牧主税のストーカーは、牧主税のストーカーではなかったのかもしれない。

『なんで野上が俺の部屋に』
「…あいつ、今は別のことに頭働かせて誤魔化してるだけ。あんたのこと気にしてた」
『もしかして、お前全部見てた？』
「……ごめん」
『まあ、いいけど』

野上の匂いは俺の作り出した幻ではなかったみたい。
なんで野上が俺のもとに行っていたのか、真意は定かではないけど…俺があんな態度取ったから、心配してくれたのかな。

俺があのあと寮に戻っていなかったのも、欠食届のことも知っていたに違いない。野上はやっぱり優しい人間なのだ、俺と違って綺麗なままだ。

謝らなきゃいけない、謝ってなんとかなることでもないけど。
俺は野上がいないと生きていけないこと、そろそろバレてしまうだろう。
でもきっと野上は笑って許してくれるんだ、放っといてくれるはず。

　

優しくて、綺麗で、愛おしい人。