【メンズ校】Amour à l’infini【男主】 (ページ48)

今日:34 hit、昨日:18 hit、合計:50,982 hit

・ページ48

気付けば全部話していた。

俺のこと。

死んだ父親に言われたことを守っていたこと。
母を守るために勉強も部活も、家のことも頑張ったこと。

母親が再婚したこと、再婚したときに姉ができたこと。
そんな姉に、弟らしからぬ感情を抱いたこと。

親の理想に従っていたら、良い子過ぎるって思われて、混乱したこと。
その日から転じて、反抗期を演じたこと。

本物とはゼロが二つ違うおもちゃのペンダントを姉にプレゼントしたこと。
大事にしてくれたけど、本物を渡したくて盗んだこと。

大切な姉が結婚すること。
その前に、仲直りをしようと俺を花火大会に誘って島にいること。

演じて、演じて、演じて。
俺自身が、心が、路頭に迷っていること。

　

ぐちゃぐちゃな脈絡で、わけわかんなかっただろうけど。
宣杜はずっと聞いてくれた。

肯定も否定もしないところが、楽で、言わなくていいことまで言ってしまう。

『誰かの理想に従うことは悪いことじゃない。自分なのに、自分じゃない何か…俯瞰的に見えるもの』
「うん…その通り」
『良い子を演じるって大変だよな』
「…宣杜も、そうだったの？」

俺が問うと、少し間を開けて、宣杜は頷いた。
今思うと初めて、宣杜が自分を出した瞬間だったかもしれない。

『そうしたほうが楽だったから』
「宣杜は今、楽しい？この島に来てさ」
『……未来がない俺には、眩しいくらいに』

その言葉の意味を知りたくて、でもなんて言えばいいかわからなくて。
迷っていたら宣杜が話を変えてしまったから、聞けず仕舞いだった。

俺とはまた違った環境で、宣杜も良い子になっていたんだと思う。
でも親のためにじゃなくて、そうするほうが楽だったから…って、宣杜は何を隠しているんだろう。

まるで生きるのを諦めていたかのような発言だけど、宣杜の無関心さなどを考えたら本当にそうなのかもしれない。

野上への執着も、そこに繋がってるのかな。

　

宣杜は、わからないことだらけだ。
でもなぜか、放っとけない。

その理由が、俺にはまだわからないでいた。