【メンズ校】Amour à l’infini【男主】 (ページ45)

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そんなことを考えながら廊下を曲がると何かにぶつかる。
それが野上だと気付くのは一瞬で、後ろに倒れないように腕を引っ張って腰を支えた。

しかし野上から発される匂いがいつもと違って嫌なニオイがしてすぐに離れる。
これは、あの時と同じニオイだ。

『よそ見してて悪かった、大丈夫？』
「…ああ、大丈夫だ」

考え込んでたのは野上も同じようで、難しい顔をしていた。
抱きしめたい、ずっと会いたかったのに今の野上はどうにも好きになれなくて。

野上のことを嫌いとは言いたくない、でもやっぱりこの匂いは苦手だ。

『また寮で』

この場を離れたくて、野上と帰るチャンスを自ら放棄する。
この匂いも、こんな俺もなにもかもが嫌になる。

「あ、待…」

　

瞬間、乾いた音が廊下に鳴り響く。

　

『…悪い』

野上の顔が見れなくてその場を逃げるように去る。
これで野上から逃げたのは2回目だ、心が痛くて痛くて仕方がない。

はっきりとした拒絶。

野上に腕を掴まれて、ぞわりとした嫌悪が身体を駆け巡った。
気付いたら手を振り払っていて、目を見開いた野上の顔は動揺に塗れていて。

こんなのは初めてだ。
野上に対して気持ち悪いと思ってしまったのは。

野上が気持ち悪いんじゃない、野上を取り巻くあの空気が悪なのだ。

　

吐きそうになるのを抑え、海岸まで走った。
乱れた呼吸を整えるのもままならない、体力の低下ではなく、情緒不安定。

自然の空気は今の俺には一番綺麗なもので、纏わりついた気持ち悪いものが薄れていく気がした。

ローファーを脱ぎ、靴下も置いて裸足で砂を踏み歩く。
波打ち際まで行くと冷たい海水が俺の足を濡らす。

すると俺の記憶が呼び起こされ、野上との思い出がフラッシュバック。
こんな時まで俺は野上のことを考えてしまうらしい。恋は盲目、痘痕も靨。

　

今は野上のことを忘れたくて、濡れるのをお構いなしに海のほうへ歩き続けた。