【メンズ校】Amour à l’infini【男主】 (ページ33)

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ふと、視線を感じて前を向くが誰もいない。
勘違いかと思ったが視界に入る赤。人形…みたいなのから、カメラのようなレンズが見えるけど。

………。

急に雑用で回収したドローンが脳裏を掠めたが、まさかな。
少し前に見た黒い影だってそうだ、野上の周りを探ってるのか？え？同業者…？なわけがない。考えるのはやめよう、狙いは野上じゃないだろうないと信じたい。牧主税のストーカーだと思っとこう。

神木「野上と一緒に乗る！って主張すると思ってた」
『え？なにが？』
神木「宣杜、いつも野上と一緒にいるじゃん」

急に話しかけられてびっくりした。
無視しかけたが、こっちを見てるから俺に話しかけていたようだ。
しかし、前から思っていたが…このフランクに話しかけてくる男の名前がわからん。

花井「僕も思った。のりりんって脱走したいわけじゃないんだよね？」
『野上が求めてるから、応えてるだけだ』
神木「じゃあお前は野上が求めないと一緒に行かないのかよ」
『脱走はどちらでもいい。脱獄なら共にする』
牧「…？どういうこと？」

野上は理解したようで、鼻で笑った。ちょっと嬉しそうに見えるのは思い違いかな。
脱獄も脱走も言葉の意は同じものだ。違いはない。ただこの場合は、少し違う。

野上たちが今したいのは"脱走してシャバの空気を吸うこと"だから学校を辞めたいわけじゃない。帰ってくるのだ、いつかは。
俺は別に野上がいればどこでもいいから、この豚箱にいたままでもいい。なんなら野上の帰る場所にだってなってやれる。

ただもし本気でここを辞めたくて、戻る気のない脱獄をするのであれば付いていく。野上のいない豚箱に用はないし、空気だって不味い。

つまり俺からすると脱走は帰ってくること、脱獄はもう帰らないこと。
そう分類して、表現したまでだ。

それを説明するのも面倒くさくなってきた。
野上が理解してくれてればもういいんだよな、どうしようかな。

…ああ、そうだ。

『その前に聞きたいことあるんだけど』
神木「なんだ？」
花井「どうしたの？」
牧「なに？」
『お前…誰？』

そうやって話を誤魔化しながらフランクな男を指差す。人に指差してはいけない、本当は。
そんな俺をこいつらはポカンと見ているが、野上は肩を揺らして笑っている。